うらがみらいぶらり

チラシの裏のアーカイブ

ポケモン剣盾 シナリオに関する雑記

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 ポケモン剣盾のシナリオについて個人的に思うところとかがあったので、ざっくりと書き溜めていた。しかし12月中なんか多忙だったので、整形するタイミングが遅れる始末。なんとか年末はボーッと過ごせたので、2020年が訪れる前に感想記事として供養する。

 

 

継承(あるいはバトンタッチ)の物語

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 各所ですでに言われているけど、剣盾のシナリオの根幹にあるテーマは「次世代へのバトンタッチ」、もっと高尚な言い方をするなら「世代交代」または「継承」あたりに落ち着くと思う。

 ザっと列記するだけでも、

  • 主人公⇔ダンデ
  • ソニア⇔マグノリア博士
  • マリィ⇔ネズ
  • ビート⇔ポプラ

 というような「世代交代」の構図が見られる。作中内で実際にポケモン博士とジムリーダーが交代するのは地味に初だったりする。

 他にも街中のモブですら「若者に将来への道を作らないとなぁ(意訳)」とかいうセリフを発していて、やたらと「次の世代へ託す」という志向が強い。従来のポケモンにはそこまで見られなかった要素だと思う。

 そんな構造やセリフを眺めていると、今作のメインターゲットは他でもない「大人」のプレイヤーなんじゃないかと考える。

 いつも通り子どもが主役(作品内外において)なのは変わらずだけど、初代や金銀、あるいはRSEをリアルタイムで遊んできた大人に向けて、こうしたメッセージを突き付けているように感じるのだ。

 実際、剣盾は「直近のシリーズから離れていた人」が遊んでいるのをよく見かける。「新世代ハード初のポケモンなので気になった」という意見は聞いた。たしかに事実上「初の据え置き機のメインシリーズ」なのだから、興味の湧いた人が出ても不思議ではない。他に「ニンテンドーオンラインのチケットが余ってた」という人もいた。

 この状況をも狙ってやった、というのは少し考えすぎだろうけど、年々増えていく大人のプレイヤーもある程度視野に入れているとは、ある程度考えうるところだろう。母が「ポケモンっていま子ども遊んでるの?」と言っていたのだけど、案外これが世間的な見方だったりして。

 

ダンデは「僕ら」だったのか?

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 ダンデは本当に魅力的で、同時に最も鮮烈に記憶に焼きつくチャンピオンだった。初手ギルガルドとか許さねえからなお前。とにかく強かったし、そこまでの強敵が最後に待っている理由づけもされていた。

 そんなダンデのデザインが個人的にはすごい印象的だった。まず最初に目を引いたのは、けっこういい大人でありながら、「あのキャップ」をかぶっていたところだった。

 ポケモンというシリーズにおいて、キャップ帽は主人公であることを示す、ある種の記号だ。歴代男性主人公の多くが、デフォルトのイメージではキャップ帽をかぶってきた。そしてサン・ムーンでひさびさに登場したレッドは、けっこういい歳と思われるのに、未だに「あのキャップ」をかぶっていた。彼がレッドであるがゆえに。

 では、これと似たものをかぶっているダンデは、いったい何者なのだろうか。巷で噂される「前作主人公説」は、しかし的を射たものだと思う。

 僕個人は、ダンデこそ「僕ら」=「歴代シリーズを遊んできたプレイヤー」の象徴だと考える。10歳の時にチャンピオンになり、以来無敗記録を重ねる「最強のポケモントレーナー」。それは、シナリオ世界において「チャンピオンになる物語」を重ねてきた、歴代シリーズのプレイヤーの経歴とも重なりうる。

 そして初代をプレイしたプレイヤーはいまどのくらいの年齢か。卑近な例として自分を取り上げると、僕は今年28歳。初代をさわったのは5歳くらいの時だ。もし、小学校中学校のころに遊んだ人なら、いま30代くらいだろうか。ともかく、2019年・令和元年のいまにおいては、「いい大人」の年齢だ。 

 ダンデの年齢は明かされていない(と思う)が、10歳の時から、「大人にまかせておけ」と言えるような身分までチャンピオンの座に君臨しているのだから、そこそこの年齢にはなっていると思う。そんな彼が、新しい11歳くらいの「新しい世代」を導き、そして敗れ、その座を明け渡すーーポケモン剣盾とは、長いことポケモンに触れてきた「僕ら」が、次なる世代を導き、やがては道を譲るべきなんだよと、同じく年を重ねたゲームフリークとともに自覚し、内省するべく語られた物語なのかもしれない……と、皮肉にも今作でもチャンピオンになってしまった身として、思い馳せている。

 実際……というわけでもないけれど、バトルタワーで登場する「ポケモンリーグ委員長」としてのダンデは、あの帽子を脱いだ「正装」で登場する。それでもあのキャップを手に持って現れるあたり、まだまだ執着があるのかな、とも考えてしまう。

 しかし、こうも考えてしまう――「僕らはダンデのように、若くして頂点に立てるような存在だったか?」と。

 

ソニアとホップ、そして僕ら

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 上記の「継承」の図からあえて記載を外した人物がいる。ホップだ。彼は歴代ライバルキャラの中でも最も魅力的に描かれている一人だと思う。だが、彼の作中での立ち回りを一言で述べると「挫折」の二文字だろう。

 チャンピオンを兄に持ちながら、その地位は親友(=主人公)が射止めた。次点までこぎつけたものの、その道中ではビートに敗北してボロクソに言われ、かなり思い悩む。そして、兄がチャンピオンの座を降り、親友がその位置に至ったことで、ホップは「兄を超える」という明確な目標を失い、スランプに陥る。「自分は(主人公に)及ばない」という失望感とともに。

 こうした「挫折」が明確に描かれるのもシリーズ的にはかなりめずらしい。思えば歴代ライバルはみんなそんなはずだったと思うのだが、詳しくは描かれることはほぼなかった。強いて言えばBWのチェレンが近いけども。

 

 そして似たような挫折と、「偉大な地位にいる親族がいる」という点で共通するのが、他ならぬソニアだろう。ガラルのポケモン研究の権威であるマグノリア博士の孫であり、そしてダンデとともにジムチャレンジに挑んだこともあり、現ジムリーダーのルリナとは親友の間柄。だが、本編中で最初に出会う彼女は、「ポケモン博士の助手」という地位にいる「ごく普通の人」である。それは分相応(十分にすごいと思うのだが)であるものの、周囲がすごすぎて、つい卑下しがちな位置だ。

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 作中でこんなセリフを見ると、余計にそう感じる。

 

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 あと、ポプラの婆さんが残したメモ書きもすごい興味深い。ソニアの原点はたぶんこれが一番明確に書かれていると思う。

 

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 ちなみにダンデはこういうの。

 

 「当人は優秀なのに、まわりが優秀すぎてかすみがち」という立ち位置。他人事と思えない人もいるのではないだろうか。やたらと現実味のある「挫折」なのだ。

 そういった挫折を経験してきた「大人」も、いまやポケモンを遊ぶ人にはめずらしくないように思う。特別な存在だと思ってきたが、若くしてもっと特別な存在を前にして、「自分はさほどではない」と萎縮してしまった人。それは、言ってしまえば「大多数」の人だ。

 そんな人が、ふとしたきっかけでなにかの道を開拓し、自分が劣等感を抱いた人たちから遅れて脚光を浴びる。ソニアは最終的にマグノリア博士から博士の座を継ぎ、そして本も出版するまでには実績と地位を得る。僕らが20年以上慣れ親しんできた「10代にして頂点を極める」という物語よりも、多少は地に足ついた「現実的な成功の物語」を、ソニアは歩んでいる。あるいは、まだ共感しやすい物語だろうか。

 

 そうした、挫折を経て「自分なりの位置」を見つけたソニアが、同じく挫折を経験し、しかし自分なりの目標ーー「ポケモン博士になる」という夢を見つけたホップを、助手として誘うという流れは、ある意味は自然なことだろう。これを「敗者の物語」と呼ぶ資格は、少なくとも僕にはない。勝って負けて、その果てに「つながる」ことで、人は自分なりの位置を見定めるのだから。

 

継ぐことをしなかった/できなかったものたち

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 「後代へ継ぐ」ということが各所でなされる剣盾にて、「継ぐ」ということをしなかった存在といえば、本作の黒幕でもあるローズである。

 彼の行動理由は正直描写不足で、個人的に剣盾シナリオへの評価を落としているところなのだけど、類推は比較的容易にできる。彼は異常なまでに巨視的な視座の持ち主で、そしてそこから見える問題を「解決できる」と断言できるほどの自信と地位を得ている人だ。なんとなく、現実にもこういう輩はいるよなとプレイ中に思った。炎上したベンチャー企業の社長とか。

 とはいえ、ローズ自身も「継ぐ」ことについては、巨視的に考えていたとも思う。彼が継ぎたかったのは「世界そのもの」で、継ぐ先は「1000年先の誰か」だろう。こうした視点と考え方は、実のところ正しいだろう。「世界の大きな問題」を解決しようとしている人たちは、少なからずそういう行動理由があるはずだ。だけど彼の場合、あまりにもそのスパンがデカくて、そして「直近に継ぐべき存在」を考慮しなかった。彼はその自信がゆえに、「当代で独力で」解決できると考えたからだ。

 これはものすごく傲慢な考え方で、だからこそ、本編中で主人公やダンデに、その「野望」は絶たれる。「次世代へ継ぐ」ことを、ある意味では怠った者の末路である。

 

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 エンディング後に登場するソッドとシルディ――すなわち「ガラルの王族の末裔」も、本編中の主要人物とはまた異なる理で生きてきた存在だ。

 彼らは「ガラル地方の歴史そのもの」を、おそらく何代にも渡って受け継いできた存在だ。ともすればそれは、ガラルにおけるポケモンバトルの歴史よりも長いかもしれない。故に、ぽっと出のソニアが発表した「偽史」に対して、彼らは「正統ではない」と牙をむく。

 しかし作中では、彼ら王族こそ「偽史」を作り上げた重宝人であることが示唆されている。ザシアンとザマゼンタという「世界を救ったポケモン」の存在を歴史から隠し、「剣と盾を持つひとりの王」がガラルを作り上げたという「歴史」を作り出した。その理由こそ本編中では明かされないため、そうした経緯が妥当であるかどうかは決定できない。しかし、「二人の王と二匹のポケモンの像」が悪趣味な壁画で隠されていたのを見るに、「ご先祖様はウソつき」だったと見るのが筋であろう。

 「正しい歴史」を隠したものたちが、しかし最後には「正しい歴史」そのものに牙をむかれ、過ちを認める。ソッドとシルディは、責任そのものは彼らにない以上、ローズよりも悪人とはいえない。ただ、「継ぐことをしなかった報い」を受けるという、物語上の構造がそこにある。

 

ガラルをかたちづくったものはなにか

 では、隠されることになった「ガラルの歴史」とはどのようなものか。正直これはマイナーバージョンで徹底的に語られてほしいし、なんならDLC的に付け加えてもいい。

 本編中で見えている要素だけを総合すると、

  • 宇宙から隕石に乗ってムゲンダイナがやってきた。
  • ムゲンダイナの体の破片が「ポケモンの巨大化(=ダイマックス)」を引き起こした。
  • ダイマックスしたポケモンたちのせいで世界はめちゃめちゃになった。
  • そのダイマックスしたポケモンたちを、ザシアンとザマゼンタを連れた「二人の若者」が鎮めた。
  • ザシアンとザマゼンタは眠りにつき、「二人の若者」はガラルの王となった。

 という流れがあって現代に至り、ダイマックスはねがいぼし(=ムゲンダイナの破片)である程度制御可能となり、ガラル粒子(=ムゲンダイナの破片)はエネルギー資源になった(ねがいぼしもか?)。サン・ムーンにおけるネクロズマのように、ムゲンダイナがガラル地方そのものを作り上げた可能性は非常に高い。

 じゃあそのモチーフってどこから来ているのという話ではあるけど、まぁおそらくアーサー王伝説は噛んでるんだろうとは雑に考えられる。

 ムゲンダイナは「隕石に乗ってきた龍」というモチーフから、ウェールズ伝承の「赤い竜」との関連性が指摘されているのを見た。

ja.wikipedia.org

 赤い竜はウェールズの象徴であり、白い竜(=サクソン族)と戦い続ける存在。ではムゲンダイナがガラルの象徴だとすると、彼が戦うのは誰なのか? ムゲンダイナを呼び出したローズはウォーティガンなのか? そのあたりはマイナーバージョン次第だろうか。

 

 そして、ザシアンが剣を持つ王たるアーサー王で、ザマゼンタが盾を持つ騎士たるギャラハッドだとすると……そこから話が広がるほど劇中に濃い要素はなさげに思う。ちなみに、ソードだと「剣を抜いた者が王(≒チャンピオン)となる」、シールドだと「盾を持ったものが杯(≒チャンピオンカップ)を得る」、という物語上の見立てが成立するんだけど、じゃあもう一方を選んだホップくんはどうなるのさ、となるので性急な見立てかなともおもっちゃう。

 

もっとガラルのことを知りてえ

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 という感じで無限に考えられるし、結論は出ない。アローラの成り立ちもUSUMが出るまでお預けだったし、現段階で解答は出せないだろう。ただし、主人公とホップの「二人の若者」が、このガラルの歴史をはからずも再演することになったのは、まぎれもない事実である。

 しかしまぁやはりほしいのはマイナーバージョン。そのくらい「彫り込んでほしい」ところが多い。「継承」される歴史がどのようなものだったのか、マジで知りたい。そのくらいには、モチーフもろとも気になる要素が多いんですよ。ガラル。

 というような感じ。展開が早ければ来年になにかあるかもしれないので、そこは希望を持って待ちたいところ。それまではワイワイとバトルに興じるのがベターですかね。