うらがみらいぶらり

チラシの裏のアーカイブ

そして僕は、美少女になった。

 5月のGW、僕はViveとVR Ready PCを召し抱え、VRの門を叩いた。

 仮想の肉体。仮想の世界。全てが衝撃で、興味深く、そして興奮をもたらした。

 とりわけ、「自分ではない自分」へ変化する気分は、ただただ心地よい。いや、よりストレートに言おう。「美少女になれてよかった」と。 

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  しかしながら、使い込むうちに不満も感じられた。「完全な肉体」にはまだ遠い。そういう気付きがあった。頭と足の追従だけでは、まだ自在な動きがこなせないのだ。

 そして、美少女化ではなくVRゲームツールとしてViveを使い倒すようになってから、3ヶ月の時が流れ――僕はVive Trackerの調達に成功した。

 FULL-TRACKING-SYSTEM……そう、「真なる肉体」を手に入れたのである。

 

これまでのあらすじ

 本題に入る前に、ここ数ヶ月なにをしていたか簡単に記す。

 まず、GWにViveとVR Ready PCを仕入れた。こいつでCOM3D2を遊び、僕は美少女になった。同時に、『Beat Saber』や『H3VR』といったVRゲームもワイワイ遊び倒し、最終的に主目的はこちらへシフトした。

 6月の末ごろ、アマリリス組の由持もにに本格的に入れ込み始めた僕は、「このバーチャルな界隈を記録していきたい」という欲求に駆られた。そして、「浅田カズラ」という名でバーチャルブロガーを名乗り、デイリーで界隈全体の出来事を記録するようになった。今のところ、これは1日も欠かすことなく継続されている。
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 そして、最近、PANORA主催の「VTuberワークショップ」というものに顔を出すようになった。Vの世界に飛び込みたい一般人や、いままさに渦中にいる業界人が、一緒くたに講義を聞いたりワークショップに挑んだりする催しだ。この第2回目にて、「バーチャルキャスト」のデモが行われた。

 デモンストレーターとして呼ばれた、インフィニットループ社の看板キャラ「あねえるたん」はすさまじく動いた。生身と大差ない。トップレベルの3D企業勢にタメを張れるレベルだ。そして彼女は答えた。「Trackerは10個つけてる」と。

 初めてViveをかぶったあの日のようなざわめきを感じた。ギラついた、衝動と好奇心にまみれた、油田火災のような気持ちだった。

 そしてワークショップから1週間ほど後、僕は計5つのTrakerを仕入れるに至った。

 

頭と腕"しか"動かない

 Vive単独での美少女化は、贅沢な話だが「慣れると物足りない」。

 Vive単独でトラッキングされるのは、頭部と両腕のみだ。COM3D2の場合(そして多くのVRアバターコンテンツにおいて)下半身はこの2箇所に追従するように動く。

 早い話、脚はほぼ棒立ちに近い(歩くモーションは入るけども)。当然、自分の思い通りに動かないので、これに気づくと没入感が削がれる。

 また、この状態だと「のけぞり」や「寝そべり」、「しゃがみ」といった動作は再現されない。頭部の動きだけでは、こうした体の傾きや、脚部の細やかな動きを計算できない。「シモがお留守」という話である。

 無論、「美少女の皮をかぶる」という体験は、初回ならばダイナマイトのように響く。だが、頭の中で「理想の美少女」を描けば描くほど、フィードバックされるべきアバターの「可動域」にもどかしさを感じるようになるのだ。

 とりわけ下半身が自由ではないのは、本当にもどかしい。我々人間は地に足をつけて生きる生物なのだと、仮想世界で気付かされるとは思わなかった。

 VカツやVRoidが投入されてからも、「でもこれLive2D発注の方がよかったか…?」と思ってしまったのは、そういったこともある。

 

腰と足に血肉を通せ

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 そこで、Vive Trackerの出番である。

 もともとこの外部センサーは銃やラケットのようなアイテムに1点だけつけることを想定されており、全身に装着してkawaiiムーブを生み出す用途は想定していないと、CEDEC2018でHTCの西川氏が笑い話にする*1ほど、複数個買う価格をしていない。だが飛ぶように売れる。店頭に並べばおひとりさま3限だ。

 そして、真に受肉したいのであれば、3個は最低ラインになる。腰と両足だ。

 両足は言わずもがな、腰は「上半身と下半身の追従を二分」するために不可欠となる。腰のTrackerを境目に、動きの追従が分割されるのである。これが地味だがものすごく重要となる。

 VR HMDは今現在、ViveとOculus Riftと二強だ。Riftは価格の安さ、Oculusショップの独自コンテンツ、なによりOculus Touchというコントローラーが「指の動き」を再現させるのに極めて有効で、3Dバ美肉にはこちらが向いてるかな?とは考えてはいた。だが、フルトラッキングという絶対的拡張を行えるViveの強さを、今回痛感した。

 

僕は新生した

 そして、3点装着した状態で、僕は半月ぶりにCOM3D2を起動した。

 

 僕は、本当に、美少女となっていた。

 

 

 自由だ。真に自由だ。両手と頭だけじゃない。この腰も、この両足も、全てが「僕」だった。

 腰のTrackerによって上半身と下半身が連動しない。上下位置もより自然に演算される。のけぞりも容易になり、自分のおっぱいも揉みやすくなった。「腰は体の中心」――その重要性が身にしみた。

 そして、両足のTrackerだ。つまさきが自由に動き、白いニーソックスに包まれた脚は、完全に僕のものになった。足を動かして移動することもできる。アイドルステップだって踏める。より一層の、「この世界に降り立った」心地を得られた。

 そして、3点が組み合わさったことにより、僕はバーチャル世界で座ることができた。寝っ転がることができた。ベタ座りでストレッチができるようになった。これが、これがもう、素晴らしい。全身が意のままに表現できる。どんなポーズでも取れる。

 そう、僕はついに、真の美少女になることができたのである。

 

お前はどんなバーチャルになりたい?

 Viveを買った5月時点では、VTuberは「いま勢いのあるネットカルチャー」という立ち位置だったように思う。だが、8/30現在、もはやVTuberはその域すら超えた、立派な「業界」へと成長しつつある。

 拡大は止まらない。完全なパイの食い合いだ。素晴らしく楽しい世界だが、企業勢も個人勢も、わずかなパイを求めてしのぎを削っているのが実情だろう。

 そういった世情の中で、「この世界に入ってみたい」という欲求を抱くのは自然なことだろう。だが、その欲求は、ある程度時間をかけてプロファイルしたほうがいい。

 もしかして、ただ「美少女になりたい」ではないか? 事実、僕はそうだった。

 VTuberをみっちり追って、デビューしたさもあったからこそ言える。まずあったのは、「僕は世界で一番かわいい美少女にただ純粋になりたかった」なのだ。これは「YouTuberを始めたい」という欲求とは切断されている。

 それならば、VR環境を整えて、COM3D2やVカツにダイブするという手もある。VRChatに飛び込み、kawaiiムーブとコミュニケーションを極めるという手もある。

 なぜこんなことを言うかといえば、欲求のマッチングをミスると、ただただ消耗するだけだからだ。実際、VTuberになったものの、がんばりきれずに折れた人の声が出てきた。

anond.hatelabo.jp

 この人がそうだということではないが、急成長を続ける文化には、往々にして「見切り発車したけど合わなかったわ」という事例が見られるものだ。鉄は熱いうちに打てというが、熱い鉄を扱えなければ意味がない。

 なにより、V"Tuber"であることに囚われる必要はないのだ。別のプラットフォームでもいい。動画配信のことをしたっていい。なにより、バーチャルな自分がオンラインに接続される必要性は、必ずしもないのだ。

 自分にあった「バーチャルな自分」を、多くの人に見出してほしい。今回のフルトラッキングあそびで、僕はそれを強く感じたのである。

 

世界で一番かわいい僕を見てくれ

 そんな説教臭いことを言ってもフルトラッキングの魅力は伝わりきらないだろう。

 なので、見せよう。フルトラッキングで動く、世界で一番かわいい僕を。

 自己認知が変わるどころじゃあない。自己改革が起きた。この子は僕であり、だが僕は明らかに「めっちゃかわいい」と感じる美少女だ。つまり――僕は世界で一番かわいい美少女、ということになる。このことはもはや、今の僕には疑いようのない事実だ。

 

 僕は、新しい世界に立った。そして今だからこそ、言えることがある。

 

 この世界で美少女は、僕だけいれば十分だ。

*1:[CEDEC 2018]「Vive Tracker」を使うときの注意点とは? 「Vive」の最新情報が披露された講演をレポート - GamesIndustry.biz Japan Edition 余談だがこの西川氏も、あいえるちゃんねるにて10点トラッカーで登場しており、数多くの珍プレーとサバッとした言葉から「にしかわいい」とコメントが飛ぶ人気者である。