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本当に空中庭園だけが「拷問」なのか? 〜異世界スマホ第11話について〜

 2017年夏クールも終わりに差し掛かる中、土壇場でささやかな椿事が発生した。

 

togetter.com

 

 ここ最近リアタイで追えていなかったせいで、最初は「おっ、11話目でさらにバケモノとして一皮剥けたか」と、当初はドキドキしながら11話目を見た。

 しかしながら、この下馬評は全くの杞憂であった。異世界スマホ第11話『ぱんつ、そして空中庭園。』は、これまでの11話の中では比較的おもしろい部類だったのである。

 

第11話『ぱんつ、そして空中庭園。』概要

 おおまかなあらすじを列記すると、

  • 冬夜さん、古代文明の空中庭園に行く。
  • スカートはいてないパンツ丸出し少女のフランシェスカがお出迎え。
  • ラブコメ的問答の末に「空中庭園を譲渡します」という話に。
  • 海辺で留守番をしていたヒロイン`s一行を招致、そのまま修羅場へ。
  • ユミナ姫がエルゼ、リンゼ、八重を連れ出し庭園内を散策。この時、屋敷へ越してきた際に提案していた「みんなで冬夜さんのお嫁さんになりましょう計画」の話を再度切り出す。
  • 生態登録の名目でフランシェスカのディープキス。
  • 「冬夜さんが好きです」とリンゼもなだれ込みKISS… 

 という具合。なろう版原作でいうと6566話に相当する。ただし、上記の内、ユミナ姫が3人に話を聞くくだりは、主人公一人称視点で進む原典にはない、いわゆるアリオリ要素でもある。

 淡々としたTASの側面が強かったここまでの異世界スマホと比べると、比較的ラブコメ要素強め。何気にキスシーンは今作初登場でもあり、「一線を超えた」とも捉えられる回ではある。

 

本当に「ハーレム系の悪いところが全部詰まっている」のか

 上記のTogetterでは「ハーレム系の悪いところが全部詰まっている」「だから11話だけでも見てもらいたい」という感想が見られた。「えぇーそこまで!?」と不思議に思う人もいるだろう。結論からいえば、「※それは個人の感想です」に帰結する。

 重婚提案はそこそこエッジが効いているものの、「パンツ丸出しの美少女」「ヒロインとのキス」「ベロチューによる生態登録」「主人公以外の男性不在」といった要素は、言ってしまえばエロハーレム系コンテンツでは「よくあること」であり、珍しさも「なんとひどいことか!」要素も、どこにも存在しない。それらの並べ方にしても、キャラの設定を鑑みれば妥当なところであり、ことさら槍玉に上がるほどひどいものではない。

 虚無ぶりに着目する場合でも、それならばTASっぷりが淡々と炸裂する回の方が強い、と感じるはずであろう。オエド編をご覧なさい。無表情になるTASっぷりが渾渾と湧き上がっていたじゃあないですか。

 第一、「懲役23分」と称されるような作品カラーは1話の時点で遺憾なく発揮されていたし、「なにを今さら」という話である。

 では、なにゆえ急にスマホは発火したのか。憶測としては以下が考えられる。

 

①ハーレム耐性に乏しい視聴者に直撃した

 異世界スマホは、早い段階で「主人公に惚れっぱなしなヒロイン勢揃い」という構図が構築されていたが、露骨なエロラブコメ展開は実は少なめだった(5話が顕著だったくらいだろう)。

 そのせいで、「サクサク進むTASアニメ」として、うっかりエロ耐性に乏しい人がこれまで異世界スマホを視聴していた可能性がある。パンチラ、キス、ハーレム……そうしたものに対して免疫を持たぬ、おぼこがごとき視聴者。そんな人が11話を見たら、こうも言いたくなるだろう。「なんてハレンチなのですか!」と。

 もっとも、異世界転生モノは「その手の展開」をお約束でぶち込むものであると事前に知っていれば、「0話切り」による自衛ができたはずである。自衛意識の乏しさに起因する、哀しいミスマッチである。

 

②アニオリ要素が過剰に受け止められた

 基本的に異世界スマホは、主人公の視点で物語が進む。原典の時点でそれが徹底されている。それを踏まえると、「ヒロインだけの会話」のみが存在する11話は、それだけで異質なものになるだろう。

 そして、その異質な時間で行われるのが、「みんなで結婚しましょう」というハーレム展開の中でも深部に位置するであろうシナリオ。①との相乗効果により、より目につきやすい可能性がある。

 無論、このような形で補完してくれた方がありがたいという意見もあるだろう(僕もその一人だ)。つまるところ、これは受け手ごとの個人差という話である。

 

③ニコニコ動画で視聴していた

 リアタイのみならず、異世界スマホは各配信サイトでも視聴可能である。無論、言わずと知れたニコニコ動画でも、鋭意配信中である。

 そのニコニコ動画では、1話時点で「懲役23分」などのジャーゴンが生成されていた。他にも視聴を「対局」と呼んだり。そして、なにかにつけて「は?」というコメントが流れる。主人公の一挙一動ごとに発生することもある、この「は?」の大河こそ、ニコニコ動画における異世界スマホの受容態度そのものである。

 基本的に小馬鹿にすることがスタンダードな中で、上記①の生娘視聴者の過剰反応がおもしろおかしく受け止められ、「は?」の雨によって肥大化、結果として「実態以上にひどいものに見える」という事象が起きているように見受けられる。

 ニコニコ動画で「コメント付き」で視聴するというのは、実のところかなり特殊な視聴状態である。通常、アニメと視聴者は1対1の関係にあるが、コメント付き視聴は「1対多」の構造を生み出す。そして、この構造は「感想の均一化」をもたらしがちである。その結果こそ「は?」の雨あられだと言えば、どういうことか伝わるだろうか。

 

④いきなり11話だけ見た

 にわかに信じられない話だが、「異世界スマホ11話だけ見た」というツイートもチラホラ見かけた。それも「11話はひどいと聞いて」という理由である。

 これは僕個人の意見だが、「全12話のアニメの11話目だけ見てなにがわかるの?無意味でしょ?」とは思う。前後のつながりがまるでわからないのに、作品を理解できるのだろうか、という素朴な疑問である。

 そんな人がいるのかそもそも実在すら疑っていたのだが、「アニメをコミュニケーションツールとしか見なさない人は平然とやる」「ニコニコのキャラクターまとめだけ見ている人間もいる」という話も耳に飛び込んでいるので、架空の存在ではないらしい。まぁ、①〜③のボヤ騒ぎを聞きつけ、怖いもの見たさでやってくる野次馬もいることは、想像に難くない(その場合でも1話から追いかけるものでは?とは思うけども)。

 言うまでもないが、これまで10話分の関係性を前提に進む11話のラブコメ展開は、単品だけ見てもまるで意味がわからないだろうし、残るのは「なんか不快なハーレム展開」という印象だけであろう。今のところ、この「つまみぐいの感想」がインターネッツを独り歩きしているようには見受けられる。

 

「つまみぐい」する視聴者たち

 いろいろ書き連ねたが、アニメを褒めるのもけなすのも、個人の自由である。先の11話についても、「ここまで全部見た上でクソ」というご意見もあるだろうし、なにも「11話がクソというのはいかがなものか」という空気感を作ろうとは思わない。生娘な視聴者もあって然りである。

 僕が一番危惧しているのは、「11話だけ見てクソと判断する」人の存在である。褒めるもけなすも個人の自由だが、その権利は「任意の1話だけつまみぐいする人」には存在しない。「クソアニメと叩きたいなら全話見ろ」と昔から各所で言われているはずだが、どうもその言い伝えが断絶している地域が、産まれつつあるのだろう。

 なにもニコニコ動画がそこである、と断定はしたくないのだが、「最新話のみ無料(=有料枠を買って追いかける必要がある)」に加え「本編からの切り出し動画が跋扈する」という環境がニコニコ動画にはある。主犯の一つに数えるには十分だろう。

 「完食」を続けた人々による論争は、(不毛ではあるが)ある程度全容が見えるコロッセオになる。だが、「つまみぐい」の感想が増加していくと、全容は霧霞のようにとらえどころがなくなる。だが、このソーシャルなご時世、「つまみぐい」の視聴者はむしろ増加の一途をたどるだろう。「誰が出火元か?」ということに、よりいっそう意識を向ける必要がある時代なのである。

 

 そして、僕から「11話だけ見たけどクソだわ」という人々に言えることはただ一つです。「いまからISUCA完走してこい」