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『シノアリス』について ~通信エラーに抗ってメンヘラのポエムノートを読む物語~

 

 梅雨も間近に差し迫った6月6日、一冊の「物語」がリリースされた。スクエニの新作ソシャゲ、『シノアリス』である。

 『ドラッグオンドラグーン』や『ニーア』シリーズを手掛けたヨコオタロウを原作・クリエイティブディレクターに据え、「それは最悪の『物語』」というダークでキャッチーなコピーで一部の期待を集めていた、ネイティブアプリ型の新規タイトルだ。しかし、数ヶ月の延期を挟んで産声を上げた本作は、ページを開くことすらままならない、「最悪の『なにか』」としてスタートダッシュを切るハメになっている。

 

 リリースより一週間を経た本作で切っても切れないもの、それは「通信エラー」である。

 クエストを開始しようとして通信エラー、ガチャを引こうとして通信エラー、「通信エラーによって戻されたタイトルからゲームを再開」しようとして通信エラー、と、至る所で通信エラーが勃発する。加えてリリース直後は、インストール後の初期データダウンロードでも通信エラーが発生する状態であった。

 無論、まともにゲームを進行できる状態とは言い難く、その「通信エラーの『物語』」に興味本位で触れたくとも、そもそもの入口にて弾かれるという粋な計らいを出だしから披露してくれた。

 当然ながら、リリース直後からメンテナンスの嵐であり、メンテナンスが明けると即座にメンテナンスへ突入する姿は、メンテ地獄の寵児・FGOを彷彿とさせるものだった。「想定を遥かに上回る未曾有の同時接続数*1という、一味ちがったセンスの運営ツイートも相まって、本作は一躍、インターネッツのおもちゃとして日の目を浴びることとなったのである。

 

 そんな通信エラーの嵐を切り抜け、無事に本編を開始できた読者が触れることになる「物語」は、端的に言い表せば「メンヘラのポエムノート」だ。

 本作のメインキャラは、ずばり「童話のヒロイン」である。アリスやシンデレラといったおなじみのヒロインが、ヨコオ節によってどいつもこいつも性悪に染め上げられており、彼女たちが「作者を蘇らせる」という目的のもとモンスターを狩り、他のヒロインと共闘しつつ殺し合いを繰り広げる、というのが『シノアリス』のコンセプトである。

 どんなシナリオを見せてくれるのか――期待をこめつつ開始したクエストで現れるのが、上述の「メンヘラのポエムノート」である。

 

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画像:『シノアリス』 - アリスの「モノガタリ」 第1章 第1節 冒頭より

 

 こちらは看板キャラ・アリスの一番最初のクエスト実行時に出てくる画面。この画面以外に、語られるシナリオは存在せず、クエストクリア後にも存在しない。さらに次章からは、2~4行程度の「ポエム」のみ表示される。

 どんな経緯で、どんな気持ちで、どのような過程を踏むか、読み取ることはできない。わかるのは、「なんかかわいいけどヤバい女が出てきた」ということだけである*2

 

 このような「モノガタリ」の体裁は、どうやら他ならぬヨコオタロウからの提案のようである。

 

www.4gamer.net

 

岩間氏:
 自分は最初に世界観、シナリオを活かすゲームっていう話で聞いていたので、いわゆるソーシャルゲームだと紙芝居的な、キャラクターが出てきて会話ウィンドウがあってみたいなやつをイメージしてましたし、そういうのがいいんじゃないかなと思って提案もしました。でも「それだとやっぱ読まない」みたいな話をヨコオさんにもらって。「確かに僕もいつもスキップしてるわ」って思いました。

 

ヨコオ氏:
 あれでも読まなくないですか? 読む人もいると思うんですけれど、僕は、特にキャラの両方、いわゆるノベルっぽく出てきて掛け合いでやるやつは読まないうえに、スキップする回数も多くてすげーめんどくさいなと思ってるんですよね。

 

「SINoALICE(シノアリス)」特別座談会の模様を掲載。「スマホのゲームは2Dのほうが少なくとも自分の好みに合ってるんです(ヨコオ氏)」「ポケラボ史上最高傑作に間違いなくなってます!(開発スタッフ)」 - 4Gamer.net より引用)

 

 たしかに、ソシャゲのシナリオには「刺し身のツマ」程度の意義しかないものも多く、スキップする人も多い。「ならばいっそポエムにしてしまえ」というのは「なるほど」というアイデアである。だが、仮にも世界観とシナリオの合わせ技でコアなファンを得てきたクリエイターを据えておきながら、出されたメインディッシュがメンヘラのポエムでは、割に合うまい。

 シナリオが入り組みそうな世界観を用意しておきながら、「俺らはスキップするし」という作り手都合でポエムへと圧縮するスタンスは、「ソーシャルゲームというゲームはいったいなんなのか」という根源的な問いかけをもたらすことだろう。

 なお、こういった性質から、脳内補完遊びの素材としては極めて優秀であり、また上記のポエムはフルボイスであるため、「豪華声優陣によるメンヘラポエム朗読ツール」としては十全の出来であることを保証しよう。

 

 ゲームそのものについては、際立って斬新なシステムは見当たらない。

 目玉としては、通常クエストにおける、他のユーザーとの「共闘」が挙げられる。自分のクエスト中に、他ユーザーがパーティとして参加し、リアルタイム操作で戦ってくれるという点はユニークである。が、これこそが頻発する通信エラーの元凶であることは、1waveごとに挟まれる「トップページに戻ります」によって容易に察せられるだろう。

 収集・強化する装備には、「武器」「防具」「ナイトメア(=召喚獣)」の三種があり、「防具」と「ナイトメア」はクエストで入手できる反面、「武器」については低レアですらガチャ依存と見込まれており、察しの良いユーザーであれば、ページの端からただよう焦げ臭い匂いに気づくことであろう。

 ガチャについては言うまでもなく出目が辛く、リセマラの「当たり」とされるSSR武器は、3%排出のおよそ50枚中のわずか3枚。ピックアップ対象の2つですら1%未満で、残る1つは0.03%。さらなる当たりとされるSSRナイトメアも小数点第2位の世界に住んでおり、上記らを引き当てるまでの過程は、インストール後すぐにガチャが始まるつくりを加味しても、毛髪を死滅させるには十分な苦行である。

 また、排出率のみならず、ガチャ用の石をまとめ買いする際にも、「まとめ買い個数が多いほど石単価が上がる」というまさかの「お買い損現象」が発生しており、ソシャゲに慣れ親しんだ人間からむしり取りたいという「ヨクボウ」が垣間見える。通信エラーによって「ガチャに突っ込んだ石が消滅する」という不具合もお約束のごとく発生し、「最悪の『物語』」を鮮やかに彩っていることも補足しよう。

 

 以上を総括すれば、「いつものガッカリスクエニソシャゲ」である。

 メンテに次ぐメンテは、対岸の火事として一定のエンターテインメント需要を満たしたものの、多少動作が安定してきた今は、「シナリオ抜きポエム」や「お買い損現象」などによって、純粋にきな臭いタイトルとなっていることは否めない。

 また、『ニーア オートマタ』とのコラボがすでに予定されているが、「ヨコオタロウ書き下ろしシナリオ!」と公式アカウントが宣伝した直後、「まだ書いていない」とヨコオ本人が発言する椿事も起きており、別の意味で目が離せない。

 

 あれこれと腐臭が目立つものの、「まだリリース1週間目」であることもたしかであり、ここから巻き返していける可能性もまだまだある。シノアリス運営様においては、これからぜひ奮起していただきたい。

 とはいえ、FGOのように「強烈な信仰心を抱える母体」があるわけでもないため、足を踏み外せば即死は免れないだろう。願わばモノガタリが紡ぎ終わる前に「打ち切り」にならないことを、祈るばかりである。