読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

うらがみらいぶらり

チラシの裏のアーカイブ

2017年冬アニメ感想 その2 ~冬の東西冷戦 けものフレンズ vs ハンドシェイカー~

PUBLISH アニメ

 つい昨日「今年の冬はちょっと控えめ……に見せかけて、チラホラと爆弾も見かけている」なんて書いたが、それは真っ赤な嘘だった。特級の核弾頭が二発も埋められていた。『けものフレンズ』と『ハンドシェイカー』。それがこの冬に東西冷戦を産み出している、規格外の破壊兵器の名だ。

 この二つを見ずしてこの冬は語れまい。双方とも、見届けるだけで時代の生き証人となることができる逸材だ。有り体に「弩級クソアニメ」と言ってしまってもいいが、もはやその表現すら生ぬるく思えるような戦慄がそこにある。

 とりあえず、この衝撃を忘れないように、今のうちに書き残す。

 

貧者のサバンナ 『けものフレンズ』

 ネクソン謹製のケモノ擬人化美少女RPG*1のアニメ化作品、それがこの『けものフレンズ』である。2015年3月16日からサービスが始まり、2016年12月14日にサービスが終了という、まさかの「死体原作」アニメである。

 そんな死者からの「過去を振り返れ」という叫びが伝わったのか、アニメ本編もまた常軌を逸した時間遡行を遂げている。

 このアニメは一応CGアニメ(キャラクターがCG)なのだが、このCGが、それはもう、すさまじいほどクオリティが低い。輪郭線が常に途切れ、ぼやけるモデリングであり、初代PSやNintendo64レベルのポリゴンが、精緻に思えてくるレベルである。

 動きも非常に怪しく、膝を動かさず歩行するわ、遠景からの口パクを省略するわの大暴れ。サバンナですらまともに見えてくるほどの「CGの原生林」が広がっており、カラオケで見かける専門学生の映像を見た時の心地を忠実に生み出してくる。

 さらに、キャラクターはCGだが、背景は時折質素な手描きで賄われており、その統合がほとんど取れていない。二次元の背景の上を、ローポリ気味なキャラクターが不自然な重力挙動で動く様は、同人3Dアクションゲームのデバッグ風景とさして変わるまい。

 お話そのものは割と真っ当で、声優も内田彩といった有名どころを抑えている。が、上記の前前前世代据え置きゲーム並の映像と、AパートとBパートの間に謎の動物専門家による動物解説コーナーが挿入されてくる奇怪な番組構成の前には、サバンナに放り出された人間のように、とてもではないが生き残れないだろう。

 様々な要素から感じられる、想像を絶する「貧しさ」は、憤慨を通り越してその希少さに頭を垂れざるを得ないほどである。これが地上波に流れること、そのものが奇跡的事象と言ってよい。この荒涼たるサバンナは、後にも先にもそう拝めるものではない。その意味で、このアニメは見届ける価値があるだろう。

 

バカ貴族の産業廃棄物 『ハンドシェイカー』

 一方の『ハンドシェイカー』は、かの『K』を手掛けたGoHandsが手がける、新作オリジナルアニメーション。フロンティアワークスとKADOKAWAをバックに据え、豪華声優陣も用意した、「圧倒的な演出技法で世を席巻するスタジオ*2」が放つ「アニメーション新時代の扉を開く*3」と豪語する意欲作である。

 そんな時代の最先端を謳うアニメーションは、あらゆる技術がメルトダウンを引き起こした、凄惨な産業廃棄物と化している。

 まず、この作品は映像の構造が普通のアニメと異なる。人物などはセル作画、背景などはかなり高品質なCGで作られ、それを組み合わせることで一つのアニメーションとなっているのである。

 作画はかなり良好で、とりわけ人物がぬるぬる動く。『K』にも見られた独特な映像色調も健在で、これだけで一つの個性となっている。女性キャラもかわいくエロく仕上がっている。と、個々の要素「は」非常に高いレベルでまとまっている。

 が、これらの要素全てが、水と油のごとく致命的に噛み合っていない。精緻な作画と精緻なCGは、混ざり合うことなく激しく主張しあい、結果的に映像全体のバランスが完全に崩壊している。三次元の上に二次元が存在するかのような次元の歪みは、「ハンバーグとマグロの刺身をいっしょにのせたどんぶり」とでも喩えれば伝わるだろうか。

 冗談ではすまないレベルで「映像酔い」をもたらす不自然な映像の上に、追い打ちをかけるかのように覆いかぶさるのが「まるで映像に合わせる気のない特殊エフェクト」である。敵の「鎖」を放つ攻撃が、テラテラと輝くCGによって描かれるのだが、これが「とりあえず映像の上にAfterEffectsのエフェクトかぶせました」というレベルのシロモノ。素人MAD動画作者が、既存のアニメ映像をいじったと言われても不思議ではないレベルであり、その意味ではまさに「圧倒的な演出技法」である。

 話の組み立てもかなり怪しく、シナリオは『けものフレンズ』の方がはるかに真っ当である。意味深な単語をノー説明で用いるのは1話ではよくあるが、敵キャラが無秩序に連呼するだけなので、「なんかよくわからないキチガイが騒いでる」というイメージを抜け出ない。とりあえずと言わんばかりに盛り込まれたクソエロ要素も哀愁を誘う。

 全体的な印象は「技術はあるがセンスが皆無の専門学生」のダダ滑り卒業製作で、それも無駄にハイレベルな技術を仕込んでるため、余計に失笑を誘うどころか、無意味にバランスを欠いた映像で視聴者を酔わせる以上、映像作品としては失格に近い。

 バカ貴族の勘違いアート作品と思えば微笑ましいが、これがアニメイト30周年応援タイトルだというのだから、日本のオタクカルチャーは懐が広い。

 

 

 とりあえずこんな感じ。この二つの東西冷戦がとにかくキている。こんな核弾頭が2発も発掘されつつ、『アイドル事変』のようなバーサーカーまで参戦しているのだから、今期は冷戦どころかハルマゲドン一歩手前かもしれない。

 なにはともあれ、こんな作品が生まれ落ちてくるのは、そうそうあったもんじゃない。幸い他の作品まで核保有というわけではないようだし、初心者がメルトダウンなアニメにふれて学ぶ上で最適な環境が、この冬はそろっているだろう。

*1:どちらかといえば、にゃんこ大戦争のようなリアルタイムストラテジーっぽい

*2:ABOUT | TVアニメ「ハンドシェイカー」公式サイト より。

*3:同上。