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「『フリップフラッパーズ』トークショー 〜ピュアライブ〜」まとめ 前篇

 1/13(金)、新宿のロフトプラスワンにて、「『フリップフラッパーズ』トークショー 〜ピュアライブ〜」が開催された。もちろん足を運んだ。端的に言って、最高の時間だった。

 ロフトプラスワンを訪れたのは初めてだったが、アングラとサブカルを煮詰めて歌舞伎町で型をとったような雰囲気の店内は正直メロメロになったし、至高のトリップ体験たるフリフラとの相性はバツグンであるように感じた。

 そんな会場の雰囲気に、勝るとも劣らないどころか余裕で食ってる内容のトークが繰り広げられた。19時から開始し、終わったのは22時半。みっちり3時間半のフリフラぶっちゃけトーク。しばらくその情報量にやられていたが、ようやく落ち着いてきたので、以下にざっくりその内容を残そうと思う。

 ちなみに記憶は完璧ではないので、各人の発言は一字一句同じである自信はないので、ご了承ください。

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 1. ゲスト登壇

 今回のトークショーは製作スタッフが目白押しだったことが最大の特徴だ。

  • 押山清高(監督)
  • 小島崇史(キャラデザ・総作画監督)
  • M・A・O(パピカ役)
  • ミト(TO-MAS)
  • 吉江輝成(ランティスのプロデューサー)
  • 永谷敬之(インフィニットのプロデューサー)

 このゲストたちが登壇した直後、「ゲストに飲み物をおごる」なるコーナーがいきなり始まった。ロフトワンプラスでは定番の流れだそうな。自由だなオイ!

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 そんなこんなで飲み物オーダーとなる。フリフラスペシャルメニューも展開されていた中、それぞれが頼んだのは以下の通りだった。こんなこと書いてどうするんだ。どうでもいいが僕はピュアヤヤカを頼んだ。

  • 押山監督:ビール
  • 小島総作監:ピュアヤヤカ
  • M・A・O:ピュアパピカ
  • ミトさん:ピュアヤヤカ
  • 吉江さん:ピュアココナ
  • 永谷さん:ピュアヤヤカ

 監督のブレなさ。そして圧倒的ヤヤカ率である。ちなみに、この時点でフードメニューのクリームボックスは完売していた。ヤヤカ強し。

 

2. 立ち上げの話

 ゲストと参加者が一斉にアルコールなどを片手に乾杯するという胡乱な流れで、永谷さんを司会としてトークショーが始まった。ひとまずということで、フリフラのプリプロ段階の話から入った。

 「アニメーションから監督のにおいというものがすでにしていて、それがおもしろいと感じていた」と語るのは吉江さん。そこから、押山監督がいかにぶっとんだ人物だったか、という話に移った。

 監督はオーディオマニアで、なにかにつけてオーディオで例えるクセがあるのだそう。イヤホン展示会の話になれば、「どこがちがうか」という点にものすごくフォーカスして話し出した、というエピソードも交えつつ、プリプロ段階ではそんな監督の持つ世界観理解に時間を要したことが語られた。永谷さんと吉江さんは、「最終的にシナリオ会議でだいぶ解消した」と話していた。

 次に、監督から、小島総作監に関する話題が。

押山「まず、彼とは仕事の接点がなかった。そこで方向性のすりあわせと把握も兼ねて、パピカとココナのキャラデザインをお願いしたんですよ」

小島「好きなように、とは言われましたね」

押山「その後、「できるかぎりかわいく」というオーダーを出していた。目の大きさとか。けど、そうしたら目がドンドン大きくなっていって。インパクト重視だったんですけど、大きくなりすぎたので途中で僕が止めました。1〜2話が大きさがMAXで、そこから小さくなってるはずです」

 アニメーター出身の監督だけあって、絵に関する要求水準はかなり高かったのだそうだ。

 「やはり厳しかった?」と尋ねる永谷さんに対し、小島総作監は「まぁ年下なので(笑)」とおどけたように返していた。かわいい。そんな彼に対し、「よくついてきてくれた。アニメーターの鑑ですよ」と監督は太鼓判を押していた。

 

3. パピカの話

 次に、パピカを担当したM・A・Oさんに「本編始まってみて(パピカについて)どう思った?」という質問。その答えは「すごく、動物的」だった。

 ここからパピカの話題に入った。シナリオ会議の段階から、パピカの動物的な面についてはかなり注意を払っていたとのことである。

永谷「ちょっと悪い言い方をすると、「もう少し人間にしよう」ということは言っていたんだよね。かわいいを通り越して……ってなるから」

押山「パピカは自然体なキャラであって、野生児にならないようには気をつけていましたね。ボーイッシュになりすぎないように、と」

  なのでパピカについては「ふわふわと、男の子っぽくしない」というオーダーは出していたのだが、いざ作打ち後にアニメーターさんに描いてもらうと、野生児になっていたらしい。それをメインスタッフで「女の子に戻す」という作業があったのだそうだ。これには会場も大笑い。

 ちなみに、パピカ役にM・A・Oさんを推したのは、他でもない監督だったらしい。

押山「なんというか、必死じゃないんですよね。ふんわりと、スキがあって、わざとらしくない。そこがパピカに合ってた。「すごいことをしれっとやる」のがパピカであって、普段から必死な感じを出さないのが望ましかったです」

 この「必死じゃない」発言に一瞬M・A・Oさんはギョッとしていたが、無論演技自体が必死じゃないわけではなく、「7話の演じ分けはすごかった」というフォローなんかは入っていた。

 

4. 音楽について

 続いて、劇伴担当のTO-MASのミトさんに話が振られた。TO-MASにオファーをしたのは吉江さんであり、その理由を以下のように語った。笑いながら。

吉江「これだけのぶっとんだ話に合うような音楽というか、頭のおかしさを考えると、TO-MASしかいないと思った。普通のアニメ音楽では合わないだろうと。だってみなさん知ってます!? まず音楽作る過程がおかしいんですよ!?」

 この毒を制するには毒をぶつけんだよ理論には思わず笑いが生まれた。蠱毒の理論で生まれ落ちたのがフリフラだと思うと、非常に納得である。

 そんな頭おかしい認定をされたミトさんが、監督とのファーストコンタクトについて語ってくれた。

ミト「最初、監督からシナリオをいただいて読ませてもらったんですけど、なにもわからなかったんですよ。僕だけじゃなく、ユニットの誰も分かっていない様子で。そこで監督に「ここがわからないんですけど…」と聞きに行って。一時間超くらい話を聞いて、A4のメモ白紙がびっしり埋まったんですね。で、結論としては、「やっぱわかんねえ」って(笑)」

 恐ろしい話である。ちなみに、営業で回っていた吉江さんも同じだったようである。「ただ、その不思議な感じが魅力として映ったとは思う。お金も集まったしね」とも言っていた。

 ちなみに、ミトさんは『スペースダンディ』にも音楽で参加していて、その中でも押山監督担当回(18話)を見たことがあったのだそう。そして、スペダン関係者の食事会(ちなみに諏訪部順一がやってるとか)に招かれて、そこでフリフラの話題を振ったところ、「押山くんだよね? 彼、天才だから。でもわからないかもね!」と告げられたのだとか。

 

5. 顕在夢としてのフリフラ

 ここでおもむろに監督が「自分はシュルレアリストだったのではないか、と思ったんですよね」を口を開き、フリフラの「わからない」要素に関して話を始めた。

 曰く、フリフラについての考察などを監督はチラホラ見かけたそうで、「そういう分析・考察ができている人というのは、未知の分析が好きな人なのかも」と話し、そこからフロイトの潜在夢・顕在夢につなげて話を広げた。

押山「顕在夢は、潜在夢から省略されて、わからないところがある。そういった「わからないこと」を読み解く楽しさを知ってる人が、フリフラの考察をしているのかなと思って、「フリフラは顕在夢だったのか!」ということを考えたんですよ」

 なるほど夢分析だな!? と思いつつ、たしかに理解の範疇を超えた要素が多いフリフラにおいて、「わからないことを読み解く楽しさ」は重要だと再認した次第だ。

 ただし、「読み解くためのフックがわからないと考察のしようもないよね」と監督は述べて、「そうしたフックに引っかかった人がいたことは嬉しい」と話していた。

 

6. お気に入りキャラの話

 まさかのフロイトが出てくる流れに、司会の永谷さんは「頭を休めましょう」ということで、登壇者の好きなキャラに話題をシフトした。それぞれの理由とともに、以下に列記する。

  • 押山監督:パピカとココナ/生みの親でもあるので、思い入れが強い
  • 小島総作監:パピココ以外/この二人は難産だったので…
  • ミトさん:ヤヤカ/最後のシーンでパピココと一緒に行くものかと思うくらい好き*1
  • 吉江さん:ヤヤカ/やっぱこのキャラ立ち位置がおいしいよねぇ
  • 永谷さん:パピカとココナ/難産になった経緯を知ってるだけに思い入れが強い

 どちらかといえばヤヤカ優勢である。やはりキャラ的においしい位置なのは間違いようである。

 ちなみにここで、パピカとココナの初期段階の名称は「シュガーとココア」だった、という事実が明かされた。あぁ、だからソルトなのか……と内心納得していたのは僕である。

 なお、M・A・Oさんには「パピカ以外なら誰を演じたい?」という質問が振られた。「ヤヤカは殿堂入りでしょ……」と笑いを取りつつ、自身が人見知りである点に触れ、「パピカとは真逆なんですよ」という話に。

吉江「たしかに真逆だよね」

監督「収録後の切り替わりがおもしろかったです。たかみな(高橋未奈美)は収録終わるとにぎやかに話しかけてくるけど、M・A・Oさんは一言も話しかけてくれないという」

M・A・O「いやー、監督になにを話せばいいかわからなくって……」

監督「僕も台本に集中してると思って話しかけられなくって……」

 物静かなM・A・Oの隣でにぎやかしてるたかみなの姿を想像すると妙な笑いがこみ上げる。そんな光景5〜6話上映会で見たぞ!?

 ちなみに、M・A・Oさんにとっては、ひたすら安牌を拾おうとするココナの姿には共感をおぼえるらしい。「立たない波風は立たせないべきなんですよ!」という至言もいただいた。

 

7. 世界観の話

 休憩トークを挟んで、ふたたび込み入った話に。今度はフリフラの世界観について。

 冒頭でも話題のあった「環世界とピュアイリュージョン」について、「環世界であると決めるつもりはない」と述べた上で、監督は次のように語ってくれた。

  • もともとは(最終話サブタイでもある)「ピュアオーディオ」から考えていった。
  • 自分の頭のなかで、ある音楽を限りなく原音に近いもので再生できる時がある。それが環世界的で、そんな「自分の視点で世界が彩られる」というものを取り入れたかった。
  • そこから「ピュア」という言葉が生まれ、そこに使いたかった言葉である「イリュージョン」をつなげた。

 そんな経緯で土台を作った後、tanuさんにイメージボードを発注していき、ピュアイリュージョンが生まれていったそうである。基本的に、回ごとに方向性は決まっていて、あとはスケジュールと現場キャパと相談しつつ詰めていった、という裏話がチラッと出てきた。

 そうしたなかで、「8話はもともとロボではなかった」と永谷さんが切り出し、「元々の8話のイメージボード」をお披露目してくれた。

 実際に見てみた個人的な印象は、『Dead Space』である。SFでメカ、そこにゾンビが添えられている、というイメージ。そのコアに据えられているのが「電車」だった。

 もともと永谷Pの「ゾンビものがやりたい」という要望をもとに、アクション的な見せ場として用意したらしい。しかし、最終的にはお蔵入りになってロボになる。

 それはなぜか。某甲◯城の直撃である。全くの偶然だったそうだが、放映時期が後追いになることを鑑みて取りやめになったそうである。南無。

 なお、「ゾンビではなくキョンシーにすればいけるのでは!?」という意見もあったらしいが、監督によれば「キョンシーは地味な人間っぽさを描くのが難しい」とのことである。「ロボットは動きに嘘をつけるのでまだ楽」なのだとか。

 

8. スケジュールの話

 そんな裏事情トークを皮切りに、スケジュールといった製作秘話へと話題は移った。

 すさまじい作画クオリティを担保するためにも、フリフラは定期的に休憩回を挟んでおり、監督はそれを「カロリーを重くする回と、コストを抑える回」と表現していた。小島総作監によれば、「7話、9話、10話、11話には監督のやさしさを感じた」とのこと。

 それでもスケジュールはカツカツであり、最終話はダビングが12/27(放送2日前)で、その時点でもコンテ撮があったとかなんとか。そこから最終話までの「最後の戦い」について、トンデモ話が繰り広げられた。

 それが「直動」と名付けられた作業で、曰く、監督が直接絵コンテから動画に描くという、恐ろしい状態だったそうである。

 レイアウトを240ほど担当しながら、40カットは監督から撮影に直行という流れにより、監督は4日間寝ておらず、「オートマティズムというか、高次元の存在とチャネリングするかのような感覚だった」などと当時を振り返っていた。素人なので詳しいことまではわからないが、少なくとも「監督とはそういう仕事ではないだろう」というおぼろげな想像はつく。

 ちなみに、「直動」によっていくつかのシーンは「線がうやむや」になったそうで、具体的には最終話Bパート明けの「水に浮かぶミミ」のシーンが該当するそうである。小島総作監もそれには気づきつつ、「でも監督のことだからなんか意図はあったのかなーって」という証言を残していた。

 異業種だけど想像しただけで背筋がゾッとする話が乱発されたが、当の監督は「おかげで超次元ピュアイリュージョンとでもいうものが描けた気がする」などと話していた。リアルSHIROBAKOというかKUROBAKOというか。永谷さんも「SHIROBAKOネタにします」と笑いを誘っていた。

 

 

 

 上記までで一時休憩となった。このころには、ピュアパピカ、アゲアゲの芋、パピカ特製グラグラハンバーグは完売となっていた。

 後半も同じくらい内容が濃かったので、次の記事に分割する。

*1:ちなみに監督は「もしそのシーンにヤヤカを入れてたら絵が白黒になってたと思う(予算的な意味で)」と笑っていた。まぁ大変。