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うらがみらいぶらり

チラシの裏のアーカイブ

「これなんてエロゲ?」の境界線について

 先日、以下のエロゲのヒロインがちょっとだけ話題になった。

j-studio.net

 

f:id:wasasula:20161105224229p:plain

(参考)「オタク殺し」と話題になっていたヒロインのプロフィール

 

 「ギャルだがウブ」みたいなキャラクターは城ヶ崎美嘉以降ちらほら見かけるようになったが、「ギャルがオタクになって主人公にべったり(しかもえっち)」というところまでくると、まさにオタク好みの離乳食といった趣きで、とても感慨深い。

 まぁ、このヒロイン自体は取り立てて述べるほどでもない。だが、このエロゲのコンセプト紹介文に目が止まった。

今作のコンセプトは

「私たちと、エッチなことたくさんしよっ♪」

ヒロインたちとのイチャラブ要素はもはや当たり前のこと。

明るくエッチに!

エロゲならばエロゲらしくエッチでなくてはーーッ!!

をモットーに、エッチな要素にこだわりを持ちました。

「とてもエッチ」で「ちょっぴりヘンタイチック」

そんなヒロインたちが過激なアプローチで迫ってくる!

彼女たちのエッチな素顔を知っているのは、ずばりアナタだけ……。

エロゲチックなシチュエーションを思う存分楽しんでください!

リアルエロゲシチュエーション! | 見どころ より引用)

 極めて率直なアピールを前に疑問が鎌首をもたげた。「『エロゲらしい』って一体なんなんだ?」と。

 

 まず、メーカー側が「エロゲチックなシチュエーション」と謳うものについて、公式サイトから抜粋してみる。

  • 足コキで連続射精
  • 壁穴フェラチオ
  • 授業中トイレでフェラチオ
  • 騎乗位コンドーム射精
  • 外でパイズリ
  • コスプレエッチ 

 いずれもエロゲではよく見かけるものであり、その意味で「エロゲチック」と表現することはできる。だが、同時に、僕には以下のような表現も連想された。

  •  「コミック快楽天チック」
  • 「ホッチミルクチック」
  • 「エロラノベチック」
  • 「石鹸枠チック」
  • 「ドスケベ同人誌チック」
  • 「単体女優AVチック」
  • 「XVIDEOSチック」

 そう、さして「エロゲならでは」というほどでもない気がするのだ。

 まぁさすがに全年齢ラノベでは性交シーンは(直接は)描けないものの、スケベレベルであればエロゲに引けを取らないものもある。我々はそれを、例えば『新妹魔王の契約者』とかで目撃することができる。

 

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(参考)こんなシーンが盛り込まれたラノベを、僕らは本屋で700円弱で買うことができる

 

 すなわち、「エロゲの特権性」が失われつつあるほど、世間にはエロが拡散し、偏在している。それも二次元三次元を問わず、だ。今やGoogleに問いかけるだけでスケベに巡り合う世の中。「エロゲらしい」と言われても、腑に落ちないのである。

 

 そんなことを考えていて、ふと、あることばを思い出した。「これなんてエロゲ?」という、旧いインターネッツ慣用句である。

  「それなんてエロゲ」 とは、他人が話したり ネット の 掲示板 に書き込みをした恋愛話 (恋話/ コイバナ) を、「それは何のエロゲ (エロゲー) のストーリーの説明なんだ?」 と、作り話、妄想 だと決め付けて茶化すような意味の言葉です。

それなんてエロゲ/ sneg/ 同人用語の基礎知識 より引用)

 発祥は1990年代の「あやしいわーるど」なのだから、時の流れが早いインターネッツにおいては、もはや玉音放送のような出来事だろう。もはや使われなくなってひさしいことばだ。

 と、上掲の引用先を読んでいて、「おや?」と思ったところがあった。

 言葉が生まれのは 1990年代末となっていますが、この頃、いわゆる 「エロゲ」「美少女ゲーム」 が、単なる オナニー のオカズ、「ズリネタ」 の範疇から大きく飛び出し、「シナリオが素晴らしくて感動できるエロゲ」「泣けるエロゲ」 として発展。 インターネット の普及も始まったばかりで、まだまだ おたく な人の割合がずっと高かったネット上で、全体を巻き込むような大ブームとなっていました。

 (中略)

 そんな中で、やたらドラマチックな恋愛話をネットでされても、リアリティを感じるというより、やっぱり 「それなんてエロゲ?」 になってしまうような気がしますw もちろん茶化したり冷やかす言葉ではあるのですが、この頃には一部の ファン の間で、「エロゲ」 はある種の理想的な純愛、あるいは切ない恋愛ストーリーと重ね合わせて認識されていたので、単なる罵倒や揶揄の言葉ではなかったのかも知れません。

それなんてエロゲ/ sneg/ 同人用語の基礎知識 より引用)

  気になったのは、「エロゲ」が「純愛」「切ない恋愛」といったイメージを指す用語として用いられている点だ。具体的に言ってしまえば、葉鍵作品をほぼピンポイント指名している。

 軟弱な平成ボーイとして違和感を感じたのはここだ。「これなんてエロゲ?」ということばに出会ったのは、黎明期のニコニコ動画だった。そこで用いられた「これなんてエロゲ?」に、「純愛」というコンテクストはまるで見当たらなかった。一例を貼り付ける。

 

 

 これらの動画に付与された「これなんてエロゲ?」タグが指し示すのは、純然たるスケベの表象、あるいは、ポップで電波なOPに代表される「よくあるエロゲのイメージ」である。

 じゃあニコニコβ時代における「よくあるエロゲ」ってなんなのよという話だが、おそらくは「きしめん」もとい『Nursery_Rhyme_-ナーサリィ☆ライム-』だろう。弾幕で埋め尽くされたあのOPから抽出された「エロゲっぽいOP」のパロディが、ニコニコにはあふれている。

 

 なにが言いたいかといえば、掲示板からニコニコへと輸入された段階で、「これなんてエロゲ?」の意味は変化しているということだ。そして、ニコニコで醸成された「エロゲっぽい」というイメージから、「明るく」「イチャラブ」「エッチ」といった断片が抽出され、いま現在の「エロゲっぽい」というイメージになっていやしないか、ということである。

 つまるところ、「ズリネタの範疇から飛び出した泣ける物語」のイメージからさらに一周して、「明るく気後れしないズリネタ」に回帰しているように見える。ただ、それではエロ本やAVと比較して特権性は薄いし、今やその回帰したイメージを取り込んだラノベがアメーバのごとく増殖している始末だ。

 このような状況こそ、「エロゲが売れない」という嘆きの一因なのかもしれない。「エロゲ」を定義する境界線が、「明るいスケベ」をさらに超える日が、果たして来るのだろうか。

 

 まぁ、エロゲチックだろうがなんだろうが、射精できるのなら一定の価値があるというものだろう。長くなったので筆を置く。