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『シン・ゴジラ』は特上ステーキ映画なのでぜひ観に行くべき

 『シン・ゴジラ』を観た。結論から言えば、この映画はもう純粋におもしろく、見応えバツグンだった。

 例えるなら上等なステーキをたらふく食う感覚。分厚く、食べごたえがあり、食後はおなかいっぱいになる。にも関わらず、不思議と胃もたれしない。そんな絶妙な鑑賞経験を得られたが、その根幹は「あぁ、そうだ、これが怪獣映画なんだよなぁ」という素朴な感想だ。

 とはいえ、この映画はとりわけゴジラファンでなくとも、特撮ファンでもなくとも、楽しめると思う。僕自身ゴジラシリーズは、十年前に観たハム太郎映画と抱き合わせだった機龍シリーズくらいしか、まともに観た覚えがない。それでも「あぁ、あぁぁ」という擬音しか出てこなくなるほど楽しめたのだから、これはすごいことですよ。

 とにかく楽しかったことを伝えたいので、『シン・ゴジラ』のよかった点を、とりあえず3つ以下に書き連ねる。

 

 1. リアルな怪獣討伐

 フィクションを語る上で「リアリティが〜」などと無闇に切り出すのは危険だが、『シン・ゴジラ』におけるゴジラ討伐の流れは「リアル」という言葉がよく似合う。すでにどこかで言及されていた気もするが、「怪獣討伐版プロジェクトX」という表現がものすごく的確である。

 実際、庵野監督はこの映画を作るにあたり、自衛隊などに「ゴジラが出たらどう対処する?どうする?」などと聞いて回ったという話もある。その話を違和感なく納得できるほど、「怪獣が出た時に国家はどう対応するか」「軍はどう戦うか」「討伐した後はどうするか」といった描写がクローズアップされていた。最たるシーンが「会議映画」という感想が出るほどに連発される会議シーンだろう。「会議おもしれえなぁ!」なんて思える映画はそうそうないはずです。

 また、ヘリや戦車が最前線で奮闘する姿を見ていて、いろんな作品に出てくる「やられ役の戦車やヘリ」を思い出し、「怪獣をやっつけるのは本当はめっちゃ大変なんだ」ということをまざまざと見せつけられた。

 ビビオペを思い出してほしい。園児の前のプラレールがごとく、ネウロイ亜種に蒸発させられる戦艦や戦闘機。通常兵器がまるで役に立たない中、バケモノをやっつけるのはスーパーヒーローたる少女だ。だが、当たり前の話だが、現実の日本にビビッド戦士はいない。『シン・ゴジラ』はあらためて、「実際は巨大怪獣にヒーロー無しで立ち向かわないといけない」という当たり前の事実と、当たり前がゆえに気付かない絶望感を、同時に思い出させてくれる。

 「そうだ、怪獣って、めっちゃ強いんだ…」という感覚がいやに新鮮なのだ。これをぜひ味わうべき感覚だ。

 

2. 勝てる気がしないゴジラの姿

 ゴジラといえば日本を代表する怪獣だし、連想する姿はどことなくヒロイックですらある。だが、この作品におけるゴジラは、めちゃくちゃ不気味で禍々しく、そしてすさまじく強そうに描かれている。「勝てる気がしない怪獣」という第一印象を植え付けられたほどだ。

 金冠確定の歴代最大サイズはもちろん、結構不気味な瞳、歯並びの悪い口元、身体に対して妙に小さい腕、変異前の口内に存在する筋膜などなど、妙にグロテスクなのである。「ゴジラってこんなんだったっけ…もっと部屋に飾って映えるデザインじゃなかったっけ…」と思っちゃうくらい。そもそも初登場時の第一形態はギョロ目のビッグスネークである。見た目からして恐ろしそうな怪獣が東京を蹂躙するのだから、快感半分恐怖半分である。

 それでいてこのゴジラは戦闘力もピカイチだ。誰もが連想する口からビームは序の口。シンゴジのゴジラはマルチロックMAP兵器搭載である。背中から巨神兵よろしくnWAY放射線レーザーをぶちかまし、丸の内を、霞が関を、銀座をなぎ払っていく光景はすさまじい。「イデオン持ってこなきゃ…」と冗談抜きで思うくらいにはパワフルなのだ。しかも放射能汚染のオマケつきであり、3.11以降の世界にまさにダイレクトアタックである。

 上述したが、こんなゲキヤバな怪獣を相手に、日本はモスラもウルトラマンも無しに戦わないといけないのである。「怪獣の恐ろしさ」をまざまざと思い知らされる体験は今どきそう味わえないし、だからこそ、劇中の「一致団結して怪獣に立ち向かう」という王道の流れが映える。

 

3. アホみたいな情報密度

 この映画でかなり特徴的なのは「会議シーンの多さ」だった。単に多いだけではない。なんとなく「うわっありそー」と思ってしまうような会議の流れや、しれっと混ぜ込まれる笑い要素が、とてもいいスパイスになり、「退屈しない会議シーン」が多く生まれていた。

 そして、会議の場面で飛び交う専門用語、個々人の意見、隠し切れない感情が、膨大な波のように絶えずふりかかってくる。ゴジラの登場シーンが「ビッグな単体のインパクト」だとするならば、会議シーンは「群体の生み出す情報のハレーション」だ。これが実に気持ちいい。めまぐるしい人と人とのやりとりが、自然と観客を「対ゴジラの最前線」に引きずり込んでいくのだ。

 総出演者数328人*1というのは伊達ではない。こんなにも大勢の人々のやりとりを2時間に何度も叩き込まれれば、観劇後はしばらく発話の必要性を感じなくなるだろう。「会議で映画に飲み込まれる」という体験は、言葉で語る以上に、非常に楽しい。

 

 というわけで半ば衝動的に『シン・ゴジラ』の楽しかったところを書き殴った。

 ちなみにIMAX対応でもある。以前まで「IMAXってうるさいだけじゃろ」と思っていたのだが、IMAXゴジラで考えを改めた。ハチャメチャに破壊される東京と、ゴジラや数々の兵器が鳴らす轟音は、IMAXで体感するにふさわしいボリュームだ。今週の土日に2〜3周目を検討しているが、可能ならば高値を払ってでもIMAXで観たい。

 とにかく楽しい映画だった。バツグンの満腹感と、リピートしたくなるワクワク感を同時に味わえる、最高の怪獣映画だった。絶対今週もう2回観に行く。

*1:ゴジラのモーションキャプチャを務めた野村萬斎も含めれば329人である。ゴジラ役は野村萬斎!狂言のDNAが入った!公開初日に発表 - シネマトゥデイ