うらがみらいぶらり

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はいふりはビビオペなんかじゃなく「艦これの仇討」なんだと主張したい

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 「はいふりはビビオペ」などという妄言をどこかで目撃してしまい、以来ずっと悲しみに暮れている。

 なにがどうビビオペなんだ。もし水上スキーだけでビビオペ認定したのなら殺害やむなしだろう。そんなことをずっと考えながら、4月が終わった。

 そういうわけで、はいふりこと『ハイスクール・フリート』は今のところきっちり視聴している。実際に視聴しつつ、転がってくる感想を眺めてみると、ビビオペ説は思ったよりも少ない。むしろ「ガルパンの劣化」という声が多く聞かれる。「美少女版ジパング」という声も耳にした。とりあえず、なにかしらの先行作品が連想されるようである。

 いずれの意見ももっともだと思いつつ、僕個人は、はいふりは「艦これアニメの仇討」ではないかと考えている。そもそも、大災厄・ビビオペと近しいコンテンツは、そうそう現れるもんじゃない。そのことを主張したいがために、以下にはいふりの雑記を残しておく。

 

ビビオペ要素について

 極めて弱い。上にも記したが、もし「水上スキーでぶんぶんぶーん」という要素だけでビビオペ認定したとしたら、それはひどい誤謬である。

 そもそもビビオペにあったのは水上スキーではなく「わんこ」であり、示現エンジンによって浮遊する陸空海全領域対応マシンだ。海しか走れないようなローテクノロジーよりも格上の存在である。

 最初の発言者の意図は不明だが、もし水上スキーだけでビビオペ認定したのであれば、あまりにも無知蒙昧甚だしいし、速やかに盗んだバイクでスカイツリーからフォールアウトしていただきたいものである。

 そもそも、ビビオペの根幹がビビッドパンチにあることを知っていれば、ビビオペとはいふりが異なるものであると理解できるはずである。

 

4話までの所感

 ビビオペ否定は済んだので、作品本体の話に移る。

 正直なところを述べれば、常に肩透かしを食らい続けている感覚だ。作品全体の緊張感に対し、キャラクターたちが全くといっていいほど呑気であり、その落差にめまいを催す。

 温暖化などで海面上昇した世界で、海の平和を守る職業を目指す女の子たちが、反乱の冤罪を着せられて逃亡劇を繰り広げる。これだけ書けばおもしろそうなシナリオラインではある。年端もいかないメスガキが艦船を操縦して砲雷撃戦をするのも、そういう世界観だと納得できる。事前の宣伝も相まって「詐欺」という印象が先行するが、ギャップのあるシナリオとしての引き込みは、1話の段階でかなり十分だった。

 なのだが、ガチな殺し合いをしているのに、登場する美少女のほとんどがやたらとノリが軽い。「濡れ衣で反逆者として追われる」という状況に陥れば、女子高生の1人や10人、発狂して身を投げそうなものである。しかし、寸前まで命のやりとりをしていたと思っていたら、カレーと風呂どっちを先にするだの、ぬいぐるみがかわいいだの、トイレットペーパーがないだの、気の抜けるやりとりを延々と繰り広げる。修学旅行と区別がつかない。これが悪い意味でのギャップを感じさせる。

 

 一方で、特殊な世界観があまり説明されない作りに対しては、「主人公たちの情報認知レベルの投影」と見立てられるため、むしろスリルを生む要素として有効だと考えている。「この事件どうなってんの?」という疑問に対し、海上の密室にいる女学生たちは答えを知る術を持たない。視聴者と登場人物が、情報認知の観点ではほぼ同じ立ち位置にいるため、没入感を生む土壌は整っている。

 とはいえ、全体の空気とキャラクターの空気の乖離が、現状は悪い方向に働いている。逆に言えば、ここからうまい具合の反転を仕込めれば、一気に評価が変わると思う。もしスロースターターなのだとしたら、あるいはガルパン、になるのかもしれない。ただ、1話まるまる使ってクソ日常回をやるようなプレイスタイルなので、あまり芳しくないかもしれない。

 どうでもいいが、明らかに作品の略称となる単語を、事前詐欺タイトルとして冠するやり方、ものすっげえ姑息で個人的にはすごく腹が立った。

 

よく見られるガルパンとの比較について

 「美少女とミリタリ」という点で、はいふりとガルパンは共通している。が、両者の抱える性質は結構異なると思っている。

 まず、ガルパンは「戦車道」という「スポーツ(ないし武道)」が主軸である。砲弾のやりとりこそ本気だが、命のやりとりは観点にない。ミリタリに紐づく生死の観念を、そっくりそのまま勝敗に置き換えているからこそ、試合の緊張感と試合後の爽快感が共存する、不思議な感覚が生まれた。

 一方で、はいふりにおけるブルーマーメイドという職業は、海上保安を行なう職業であり、彼女らが駆る艦船の砲弾や魚雷はフェイクではない。そして、主人公らが乗る晴風の装備は模擬弾だが、彼女らを追撃する敵船は(おそらく)実弾を使っている。そこには命のやりとりが発生している。試合後の爽快感とは断絶された世界である。

 命のやりとりの有無は、作品のカラーにだいぶ違いをもたらす。なのだが、はいふりは終始、「試合後」のような呑気な空気を漂わせている。これが両者を混同する要因であろう。

 見た目は似ているが、やっていることはだいぶ違う。そこに意識を向けることは重要だ。

 

艦これの仇討として

 では、あえてはいふりの近い位置を考えると、それはアニメ版艦これだと考える。

 思い出してほしい。妙に局所的なシリアス要素。それ以外を埋める呑気極まりない日常パート。人が死のうともワイワイ宴会を開けるメンタリティ。そんな「戦地の緊張感」「少女の気楽さ」が、ダイオキシンを撒き散らしながら共存していたのが、アニメ版艦これであった。

 はいふりはどうか。それは、敵艦から逃げた直後に「カレーだー!」とわちゃわちゃする光景を見れば、言うまでもない。実弾に晒された海上の密室で、女子高生は実に気楽に生きているのである。

 おしゃべりと設備点検を等価なものとして行う姿は、「艦船乗務員として生きる女子高生」という設定と見れば、ある種のリアリティとして許容できる。しかし、命の危機の中にあっても無邪気でいる姿は、「そういう女の子だから」と説得させるには歪である。

 その「歪さ」こそ、はいふりを「艦これの仇討」と見なせる根拠である。

 

 では、なぜ今になって「艦これ2.0」ともいえる醜悪なコンテンツを仇討として世に放ったのか。こっからはもはや妄想だが、手っ取り早い推測材料はAmazonに転がっている。

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 ビッグネームにも関わらず振るわない評点。ニコ生アンケートにおいても、「訓練された視聴者しか残らない」と言われる最終話の集計結果は、「1:とてもよかった」が25.5%というどうしようもない有り様。

 今やKADOKAWAのフラグシップとも言えるコンテンツだが、世評だけ切り取れば幽霊船も同然である。無数の固定ファンがいるとはいえ、野放しにするには、いささか無視できない惨状だろう。

 ならば、作りなおせばいい。艦これの目立つ問題点を潰した、「戦艦と少女の融合体」を再建造すれば、それは莫大な金脈になるだろう。このようにして、艦これの仇討が計画されたのである。

 アニメ艦これの問題点として、艦娘という設定の特殊性が挙げられる。「艦船の擬人化」というフォーマットだけ用意され、詳細な設定はあえて配置しない。この世情を忠実に反映した結果、アニメの艦娘たちは、どこから来たのかもわからない生娘にしか見えず、むしろ人間なのかもわからない不気味さを創出するに至った。

 そこではいふりでは、「海上保安に従事する職業を目指す少女」という明確な設定を用意した。そして、世界観もきちんと整えるやることで、年端もいかない少女が航洋艦に乗り込むことに対する説得材料を確保する。さらに、メカ少女的な直接戦闘ではなく、実際に艦船を運営させることで、かの「水上スキー問題」も事前に潰す。

 このようにして、艦これでやりたかった「海の上でミリタリに戦う女の子の活劇」を、実行エラーを抑える形にリファインしている。「悪い荒唐無稽さを減らした艦これ」としての再建造である。

 また、無意味にシリアス要素を撒き散らしつつも、如月ショックの教訓を得たのか、4話まで死人は出していない。「危険な状況にいるが、女の子たちは無事です!」というアピールであろう。これによって視聴者は脳機能を止めて視聴に臨むことができるため、ユーザーライクなはからいといえよう。

 

 無理のない設定で、ちょいとシリアスに、だけども殺さず、ほわほわと。

 艦これの欠点を解消したKADOKAWAの海洋兵器は、虎視眈々と先人の仇討のため出航した。根本的な構造の歪さを抱えながら。

 

余談

  • すでに色のついたフィギュアー見本が出ているなど、商品展開が異常に早い。そのあたりも、艦これの仇討っぽい。
  • キャラクターデザインは、まぁかわいい。エロさは控えめで、ほわほわと動かすだけの一般向け同人誌への転用に最適だろう。
  • 制作のプロダクションアイムズってどこだと思っていたが、なんと『新妹魔王の契約者』のところだった。下着の作画が妙にえっちだったのはそのためか。ちなみに今期は『ハンドレッド』も手がけているようで。
  • TrySailのOPは割といい方だなと思ったけど、本編とのテンションの落差で失笑を誘う。そのあたりも艦これの仇討っぽい。「この落差は戦略面において不利益には働かないんだぞ」って感じで。
  • 個人的にはマジメに仕事をしてる場面が多い小林ゆうがすき。
  • いろいろと壊滅的要素が多かった艦これと比べれば真っ当に見えなくもないが、その分姑息に見えるのでイライラレベルが高い。一方で、4話はひさびさに「アニメを見て絶句する」という体験だった。空戦以来です。
  • でもこの後上手に船員を殺していったら手のひら返しちゃうんだろうなーとも思ったりする。そう思えるくらいには、どうとでも転べる話の進め方ではある。