うらがみらいぶらり

チラシの裏のアーカイブ

オーダーメイドテンプレラノベの夢を見るか

 あくまで俗称として「テンプレラノベ」とは言われてきたものの、もしかすると本当に、「型に材料を流し込んで固めるだけ」という要領でラノベができるかもしれない。そんなことを予感させるエントリーに出くわした。

 

x6xo.hatenablog.com

anond.hatelabo.jp

 

 雛形要素を用意して、ランサーズへ執筆依頼をぶん投げる。すると第1章の冒頭みたいな文章が納品される。すごい時代になったと思う。

 こういった形で作られたものは新人賞に応募可能だろうか、という疑問も浮かんだ。とりあえず電撃小説大賞とMF文庫J新人賞を調べたが、「共作である」という旨を明記していれば問題ないようだ*1 *2。ランサーとちゃんと交渉できれば、バクマン方式でラノベ作家となることも不可能ではないかもしれない。

 とはいえ報酬をちゃんと設定しないと、後々大きな問題になるかもしれないとも、上掲1つ目のエントリーを見ていると思う。というか270円で数千字の執筆を請け負うランサーの方も怖い。小銭稼ぎなのか承認欲求稼ぎか。

 

 テンプレといえば、なろう系の異世界転生モノも、そろそろハウツー本ができるんじゃねと思えるくらいに様式化が進んでいる気がする。

 と思っていたら、よりにもよってなろう内にこんなものを見つけた。

ncode.syosetu.com

 ノリが小説のハウツーというより、RPGの序盤攻略法みたいになっている。実際、フラッと開いた異世界転生は、本当に以下のような展開をそのままなぞってたりする。

 

◆1.1. 現実世界で死のう!
 死因はどんなでも問題ありません。単に異世界へトリップするだけならばトラックにひかれてしまう、オンラインゲームの世界へトリップするのならばサービス終了のはずがログアウトできない、という手法が無難です。
 『剣道や合気道のような類いのものを教わっていた』という設定をつけておくと、後に使えるかもしれません。オンラインゲームならば、サポートキャラの存在などを示唆しておくことも考えられます。ただし、これらを長々と書き連ねるのは避けた方がよさそうです。*3

 ◆1.2. 神様に会って異世界へ行こう!
 神様はどんなでも問題ありません。土下座するオッサンが出てきても良し、幼女な『なのじゃー』さんが出てきても良しです。しかしトリップ後に登場予定が無いのならば、ひとまずオッサンにしておくべきです。理由は単純に、上の例ならば『なのじゃー』さんが本編に出せなくなってしまうからです。
 そして、反則的な力をもらいます。主人公は神様の手違いで死んでしまったから、といった理由でかまいません。無限に格納することができるアイテムボックスや、あらゆるステータスを知ることができる鑑定技能をもらっておくと今後の冒険が楽になります。
 ここまでがプロローグ。ですがテンプレものは、しばしばプロローグは飛ばして読むという方がいらっしゃるようなので、読んでいなくても差し支えない程度の内容でも、大丈夫なのかもしれません。むしろそのほうがいいかも?*4

 ◆2.2. 奴隷を購入しよう!
 新たなヒロインをたらしこむケースです。奴隷の金額によっては、ギルドの依頼をこなす理由付けにもなります。この展開を予定しているのであれば、差別化した方がわかりやすいだろうので、1.3.にて奴隷のヒロインを出すのは考えものなのかもしれません。*5

 

 異世界転生モノに対する個人的な印象は「実況プレイのリプレイ小説化」なので、作り方も「(ゲームの)シナリオをたどる」というスタンスがちょうどいいのかもしれないとは思った。

 「書いていて楽しいの?」とも思うけど、やってることは半分RPGツクールだし、おまけにシナリオとシステムのフレームワークが用意されているイージー作成モードなので、たぶん楽しいと思う。あくまでこのフレームワークそのものが好きな場合に限るけど。

 

 至る所でテンプレ化の波が進んでいる。

 時代に即したフィクションがウケて、似たような物語が作られるのは世の常だろうけど、ここまで画一化しているように見えるのは類を見ないかもしれない。

 しかし、執筆代行まで可能なレベルでテンプレが確立すると、行き着く先はオーダーメイドテンプレラノベかもしれない。

 好みに応じて、テンプレの細かい要素をちょっとだけ変えて、依頼者の望む世界に一つだけのテンプレラノベを作る、完全に個人間で制作依頼と納品が発生するサービス。

 数年先、もしかするとこんなやりとりが生まれるかもしれない。

 

「ラノベを一本作っていただきたいです。学園バトルラブコメ、250ページ程度でお願いします」

「承りました。舞台はファンタジーでしょうか? それとも現代でしょうか?」

「親近感がほしいので、現代でお願いします」

「バトルの方向性はどのようなものが好みでしょうか?」

「そうですね……魔法をドバーンッ、よりも、剣と剣でガキーンッ、って感じかな……」

「すると、『アブソリュート・デュオ』に近いイメージで?」

「えぇ、そうですね。武器を召喚する、あの感じで」

「なるほど。では、ヒロインはどうしましょう? ユリエ・シグトゥーナちゃんのようにいたしますか?」

「いえ。チョロいツンデレが好きなので、『精霊使いの剣舞』のクレア・ルージュちゃんみたいな子でお願いします。あっ、能力は炎属性じゃなくて、雷属性がいいです!」

「かしこまりました。それでは、こちらのご注文で執筆を始めさせていただきます」

「はい。よろしくお願いします」

 

 おおむねの定型路線をなぞれば、あとは設定のマッチングと好みのヒロインがいるかどうかと考えれば、こういったテンプレラノベのオーダーメイドもあるのでは……などと妄想する。

 とはいえ、本1冊分を書けという話になると、相場が問題になる。

 仮に、1枚40×34字を100枚*6を1冊と仮定し、400字あたり5000円として雑に算出すると、一冊あたり170万円。オーダーメイドの価格設定としてはキツい。では1冊10万円で成り立つだろうか……という話になると、もうわからない。

 しかしこんなことを考えている間にも、もっとずる賢い人が、これ以上に安い単価で買い叩くようなビジネスを始めてしまうのだろう。

 

 なにが言いたいというわけでもないけど、そんなオーダーメイド化の流れがあってもいいような気がした。無論、最も健全な発想は「好みの物語がないなら自分で作る」だろう。そのためにテンプレートを拝借してくるのは決して悪くはないはずだし、それがチリツモした結果が「小説家になろう」な気もする。

 少なくともこうしてブログに記事を一つこしらえるよりも、「小説家になろう」で異世界転生小説を投函する方が、ずっと健康で文化的だ。

*1:電撃小説大賞 よくある質問と回答

*2:よくある質問と回答|MF文庫J オフィシャルウェブサイト

*3:『なろう』で、テンプレ異世界トリップものを書こう!(4000文字、読了8分)

*4:同上。

*5:同上。

*6:MF文庫J新人賞の応募要項を参考にした。80〜150枚が応募規定で、これで最優秀賞受賞すると賞金100万円。比較対象として適切かどうかは怪しい。