うらがみらいぶらり

チラシの裏のアーカイブ

異世界に転生したら奴隷を買ってえっちしちゃうものなんだろうか

 今まで「小説家になろう」は少し敬遠していたのだが、つい先日『幻想再帰のアリュージョニスト』を読み始めた。これがなんとまぁとんでもなくおもしろくて非常にびっくりしている。

 というのも最初は異世界転生パロディ(もといメタ異世界転生)として期待して読み始めたところ、思った以上にSF要素をぶち込んできたと思ったら、オカルトパンクな世界観が読み進めるごとに広がり、スキマに仕込まれた小ネタ、ミームや承認欲求や「ゆらぎの神話」といったインターネッツに親和性高めなフレーズまで飛び出してきて、「開けてみたらとんでもないびっくり箱だった」という状態。まだ読んでいない人は読んでみましょう。きっとそれが一番早い。

 しかしこの作品がなろうにおいては異端に近い位置にいることは確かだし、よもや「異世界転生モノの代表作!」などと唱えれば、妖怪でなくとも怒りに駆られて襲撃を仕掛けることは明白である。なので、もっとスタンダードな異世界転生を読むことにした。ジャンルは実物を読まないことにはなにも言うことはできない。

 

 スタンダードな異世界転生。

 それはなんか事故って異世界に転生しちゃって、そこで存分にファンタジーセカンドライフを送る感じ。完全なイメージだ。そして、本屋で適当にザッピングしている中で、「なんかゲームまんまな世界で女の子を買ったり従えたりしてハーレム築くんでしょ」というアバウトな偏見まで加わる。

 こうして現時点の漠然としたイメージから、書籍化されるほどのものを探してみて、『異世界迷宮でハーレムを』をとりあえず読んでみることにした。書籍を買おうかとも思ったが、なんとWeb版が未だに残っていた。原題は『異世界迷宮で奴隷ハーレムを』というらしいが、「バーベキュー」と「青空バーベキュー」程度の差分だろうと思ったので、とりあえずWeb版を読むことにした。それがたしか昨日のことだった。

 仕事の休憩時間やカスタムメイド3D2体験版の合間を縫ってちょいちょい読み進めた感想としては「無になる」だった。

 

 内容としては、「学校でいじめられ父からも虐待されたことのある男子高校生が自殺サイトを見てたら変なバナーを踏んでゲームめいた異世界に飛んでしまったけどスキル設定能力と厩戸に落ちてた聖剣デュランダルを活かしてチマチマ金と経験値を稼いで美人の奴隷少女をゲットだぜ」というものであり、「名は体を表す」とはこのことかといたく感心した。

 文体はとても淡白であり、小説というよりはmixiのゲーム攻略日記という印象を受けた。イベントを淡々と記録してあるのでプレイログともいえるだろうし、読み進める感触は「スタンダードなRPGの実況プレイニコ生を観る」と言い表せる。

 主人公は自由にスキルの組み換え可能といういわばチート持ち、武器も高攻撃力+HP・MP吸収という「堅実」を絵に描いたようなスペック、住人もやたら親切と三拍子揃っている。ワクワクもハラハラもしないが、Amazonのレビューを読む限り、そこが魅力なのだろうと思う。

 

 「読んでいて安心する」という感触は、これまで聞くだけでは理解できないものだったが、実際に読んでみると需要の存在も納得できる。

 命の危険も尊厳の危機も訪れないが、知らない場所を冒険し、自分で道を切り開き、財や人脈を築いていくことができる。まるで旅行代理店のツアーパッケージのようだ。ダラダラと考えなしに進んでも安全だ。

 読んでいる最中にドキドキハラハラしない。これは、大きなストレスレスの特質だろう。

 ページをめくる好奇心は、時折ショッキングな展開を待ち構えるストレスに化ける。それを嫌う人は一定数いるだろうし、劣悪な体力・精神状態では誰だって堪える。そうした時でも「ファンタジーな冒険してえ」と思う時があるだろう。

 俗に「チート転生モノ」は、疲れきった人を安全な冒険へと連れて行ってくれる代理店のようなものなのかもしれない。

 

 もっとも僕の場合、ごく普通のコンディションで読んだせいか、社会科見学でマヨネーズ工場のベルトコンベアを見ているような感覚に陥った。おそらく使い方次第では、脳内を空っぽにしてスッキリさせることで、瞑想の代用になるだろうと考えている。

 また、直後にアリュージョニストに目を移したら「うおー!うおー!」などと叫ぶ興奮状態になったので、「鎮静剤の後に劇薬を飲んではいけない」という教訓も得た。

 それとびっくりしたのは、奴隷の美少女を身請けした後の描写だった。R15だからまぁラッキースケベ程度かなと思いきや、1ページまたいで朝チュンだった。「へー!セックスしちゃうんだー!」という驚き。奴隷を買ったその夜に童貞卒業ナマハメファイトを敢行できる元・日本の男子高校生の主人公には「そりゃいじめられるわ」という賞賛の言葉を贈った。でもそういう世界ならまぁセックスしちゃうだろうなとも思ったし、僕もセックスしたいなぁと思った。

 

 とりあえず朝チュンのところまで読んだのだが、目次を見る限りまだまだ序盤みたいだし、『異世界迷宮でハーレムを』以外にもなろうの転生モノはたくさんある。「異世界に転生して女の子従えてハーレムやで」というジャンルは、ごく一地方にすぎない。

 なろう系についてはいろいろと考えてみたいことが多いのだが、僕には経験値が圧倒的に不足している。読まない限りはなにもわからない。もう少し、異世界に転生しちゃう物語を読んでいきたい。

 

異世界迷宮でハーレムを 1 (ヒーロー文庫)

異世界迷宮でハーレムを 1 (ヒーロー文庫)