うらがみらいぶらり

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ごちシコ論入門 第3回 チノシコはヘゲモニーなのか?

 実に5ヶ月ぶりの開講である。ごちシコ論入門、第3回はごちシコの薄い本の展望と、現行のごちシコにおける最大勢力・チノシコの考察である。

 今回開講した動機は以下の記事である。

d.hatena.ne.jp

 

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 なんだって? ヘゲモニーはチノシコ? ウソだろ!? シコならシャロかリゼじゃないのか???

 このとらのあなの検索結果は大きな衝撃を(主に僕に)与えた。しかし、そうはいったって一時的な事象なんじゃないか。しかし、チノアラームがAndroidとiOSでリリースされた現在、「チノシコが最大勢力」という仮説にもある程度の信憑性が感じられたのだった。

 ごちシコの現在とは、いかなるものなのか。そして、チノシコとはいったいなんなのか? 以下にて、簡単な調査結果とともにチノシコについて考えていきたい。

 

  

調査:ごちシコの「いま」を知る

 手始めに、現在のごちシコはどのような状況になっているのかを調査した。

【調査方法】

  1. 同人誌ショップにて、店頭に並ぶ全ての18禁ごちうさ本を購入する。*1
  2. それぞれの本の中で、性的描写が存在するキャラをカウントする。*2
  3. 各キャラのカウント数を母数で割る。これを「登場確率」とする。
  4. それぞれの本ごとに「1キャラのみ」か「複数キャラ」かを集計。これを「組み合わせ」とする。

 

 ごちうさのようなきらら系美少女博覧会となると、エロ同人においても「全員セックス」というシチュエーションはめずらしくない。また、百合文脈に基づいたカップリング描写も見受けられる。

 このため、「複数登場を含めた各キャラの登場頻度」と「各キャラの厳密な組み合わせパターン」は、最低限分けて考えたいという意図から、3と4の二種類のデータ集計を行った。リゼ単品とリゼシャロをごっちゃにするのはよろしくないだろう。

 

 さて、まずはごちうさのエロ同人を手に入れなければいけない。5月10日(日)、神田明神祭でにぎわう街の中、以下の店舗にてごちシコ本を購入した。

  • とらのあな:15冊
  • メロンブックス:1冊
  • らしんばん:1冊

 総計17冊、お会計はとらのあな時点でざっと¥10,000を超え、そこからは計上するのをやめた。そんなことを気にしている場合ではない。ちなみに結城友奈とユリエ・シグトゥーナのえっちな本もあわせて購入しているが、まぁそれはどうでもいい。

 

 

調査結果と考察

 これらの本を読み、まずは各キャラの登場確率を集計した。

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 図1:各キャラの登場確率グラフ(※小数点第二位以下は四捨五入)

 

 お分かりであろうか。圧倒的なチノの登場確率である。それもそのはずで、なんと17冊中12冊に登場し、そのうち7冊はチノ単品、3冊はココアとの抱き合わせである。5冊発見した新刊は全てチノのエロ本という状態である。

 チノの一人勝ちという状況で他の分析などあったものではないが、追随するのはシャロ、そしてチノと抱き合わせのココアだ。ただし、シャロは単体本が3冊もあるのに対し、ココアの単体本は存在しない。ココアシコガチ勢としては悲しいものである。リゼがそこに僅差で続く。圧倒的に少ないのは千夜である。なにせ登場したものが全員登場本だけであった。あまりにも不憫といえよう。

 

 続いて、それぞれの本におけるキャラの組み合わせを抽出し、グラフにしてみる。 

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 図2:各組み合わせの抽出

 

 上記でも述べた通り、チノ単体が7冊、ココアとのセットが3冊である。とはいえ単体で3分の1以上を確保するあたり、その求心力は圧倒的である。

 単体だけを見てみると、チノに続くのはシャロとなる。ここにリゼが続き、上述の通りココアと千夜の単体は存在しない。

 複合パターンを見てみると、ココア・チノの次点はリゼ・シャロ……と見せかけて、ココア・チノ・リゼというラビットハウス組の本も並走する。意外だったのは千夜・シャロがなかったこと。円盤パッケージも飾ってるのに。

 総じて見てみると、勢力としては単体の方が多い。チノの数が目立つものの、シャロも単体で3冊存在する有力株である。リゼもネットで調べてみるともう少し単体があるようだ。つまるところ、抱き合わせに頼らずとも単独でシコリティを発揮するヒロインがごちうさには多いということであろう。つまり、シコれる。

 

 

なぜチノシコであふれているのか?

 さて、ここでひとつのどうしようもない事実が浮かび上がる。

 

「ごちうさの18禁同人誌で最も多く登場するのはチノである」

 

 全体的にロリ寄りなキャラデザのごちうさの中で、13歳女子中学生というぶっちぎりの年少者が一番エロの対象になりやすい。もはや言い訳不能なロリコンの大平原がそこには存在する。

 R18な消費の対象がロリに集中するケースはそこそこある。『たまこまーけっと』でも、PixivのR18タグが一番多かったのはあんこ(小5)だったと言われている。今だって、ヘスティアほどではないが、とらのあなには『夜ノヤッターマン』のレパード様(9さい)のえっちな本がかなり配備されている。かといって全てのロリがR18筆頭になるかといえば、もちろんそうではない。

 ではなにゆえチノはごちシコ市場において覇権を握ったのか? 理由は以下のようなものが考えられる。

 

①妹性

 チノの特筆すべき性質として妹性の高さが挙げられる。具体的な要素としては、

  • 年少者かつ小柄な体躯
  • CV:水瀬いのりのロリ感
  • 内向的性格と家庭環境からくる庇護欲誘発

 などが考えられる。

 そしてその由来はもちろん、ココアの数々の所業によるところが大きい。しかし、シャロも「妹にほしい」という発言をしているため、作中でも妹のように見立てられる存在であることが推察される。こういうこと書くと俺ツイのアルティメギルみたいだね。

 このようなキャラクター性を理解してか、ごちうさ関連グッズでは「お兄ちゃん」とチノに言わせるものすら存在する。目覚まし時計のボイスに収録され、さらには目覚ましアプリでは「お兄ちゃん」の連呼である。また、添い寝CDでは「お姉ちゃん」と呼び、ココアのロールプレイとしての側面はあるとはいえ、妹として強調される運用がなされている。

 原作レベルで「妹」という属性はかなりプッシュされており、これに感化された読者・視聴者は相当数いるものと思われる。そして、エロ同人において「妹」とは明確なセックスの対象として君臨する。妹という立場は、他の4人にはない明確なチャームポイントであり、それゆえエロ同人の生産が加速しているのではないだろうか。

 それを裏付けるように、チノ単体(=男性が登場する)の本においては、顔無しの男性に対して「お兄ちゃん」と呼ぶ本が、7冊中3冊を占めた。「チノにお兄ちゃんと呼ばれる」というシチュエーションは、それだけで1冊描き上げる動機にすらなり得るだろう。それは、非常に強大なパワーだ。

 

②シチュエーションの組みやすさ

 作中において、チノには「喫茶店の一人娘」という設定が与えられ、そのため店番をするという状況を自然に発生させることができる。

 殊に「喫茶店の娘が店番をする」という状況は、招かれざる客を召喚することが比較的容易である。なにせ男を出すためにわざわざバイトへ行かせる手間が省けるのだ。さらにラビットハウスは比較的空いている店であるため、セックスを咎められない密室も作りやすい。加えて実家も兼ねているためベッドも容易に出せる。

 「人が容易に侵入できる密室」は、エロい話を作る際には絶好の環境である。ラビットハウスの看板娘たるチノは、ライオンの檻に置かれたステーキのようなものだ。ソフトなものからハードまで、お一人様も団体様も問わずな、至つくせりの環境であろう。

 

③ココアという相方の万能性

 チノシコを語る上で外せない存在がココアである。「ココチノ」というカップリングが存在するほど、両者の関係性は作中において非常に強い。そのため、二次創作の場においては容易にレズセックスへと発展させることができる。

 ココアが出てくるチノ18禁本を読んでいて興味深かったのは、ココアの扱いがヘテロセックスにおける男性に近いパターンの存在だ。レズセックスとしてココアが受けに回るパターンもあったが、ココアがチノを一方的に攻めるパターンの方が多かったのだ。ココアが脱いでないパターンすら見受けられた。

 これは、作中におけるココアのチノに作中の接し方が少なからず影響しているだろう。ココアとチノを並べた場合、ペースを握るのはだいたいココアだ。当初は妹扱いを迷惑がっていたチノをまんざらでもない態度に変えたのも、ココアの明るい強引さによるところが大きい。裸の付き合いになった際に上手に立つのはココアだろう、という連想は比較的容易に生じるだろう。

 また、「チノのえっちな姿は見たいが見も知らぬ男を出したくない」というわがままな欲求に対しても、ココアを男性のかわりに用いることで対応可能だ。添い寝CDの件も考慮すると、ココアはチノと接したい男性にとっての代行者としての側面も有しているかもしれない。

 さらに、チノに対してココアが間接的に影響を与えるパターンも存在する。チノ本で目立つのはオナニーというシチュエーションだ。オナニーだけして終わるものもある。この際のチノの動機は「ココアさんのことを思うとここが熱くなる」などである。完全なレズの思考だが、18禁チノ本の中では最も角の立たない1冊を作るには打ってつけである。

 つまるところ、ココアを軸にして幅広くシチュエーションを組み上げられるのである。この点はリゼシャロにも共通するところだが、「ココアはチノを一方的に攻め得る」という特性によって「チノのえっちな本」が作られやすい点は、明確な強みと言えよう。

 

 

インモラルとファンタジー

 さて、以上のような特性を持つチノであるが、忘れてはならないのは13歳というぶっちぎりの年少者、ついこの間まで小学生だったそのロリ性である。

 言うまでもないが、小学生とのセックスは、虚構たるエロ同人においても確実にロリコン認定が下る。そして、13歳以下に対する性的欲求はペドフィリアの定義にすら引っかかる。13歳のチノはギリギリこのラインに入るし、14歳になったところで危険域には変わりない。チノのスケベ本が並ぶ光景は「ロリコン帝国」と呆れられても致し方のないものだ。幼さが強いKoi作画ならなおさらだ。

 しかしながら、このインモラルすら許容されるのがフィクションである。エロ同人という虚構は、現実では倫理的に困難な願望を叶える願望機なのである。

 13歳の血のつながらない少女に「お兄ちゃん」と呼んでもらってセックスする。この現実では到底実現し得ないシチュエーションも、エロ同人なら容易に叶う。そして、ごちうさワールドそのもののファンタジー性、水色のロングヘアーというチノ自身のファンタジー性もかんがみれば、チノシコとは壮大なファンタジーとすら言えるだろう。

 異世界めいた街で出会う、妖精めいた少女との出会い。チノシコが市場を席巻する原因は、決して欲望と創作の安易さだけではない。チノシコは、かわいさだけをブレンドしたファンタジーとして、夢追う人々に届けられている。色欲だけでは説明できない。エロとカワイイの境界線上で揺らいでいるそのあり方は、「シコれないけどきれいでかわいい」という評価がなされるエロ同人やエロゲにも共通するだろう。

 

 ごちシコ本を買えば7割の確率で現れるチノシコは、ある意味、現在のエロにまつわる情勢を端的に反映しているのかもしれない。性的趣向を超えて、キャラクターの受容のされ方について考えるべき事象として、チノシコと向き合うのも一興だろう。

 

 

参考文献

 今回の調査対象にさせていただいた同人誌です。どれもいかにエロまで持っていくか千差万別で、とても楽しませていただきました。

 【凡例】サークル(作者名)『書名』

  • Come Through(あづみ一樹)『チノちゃんにおにいさんって言われたいっ!』
  • わたくび(笹井さじ)『チノちゃんのおねがい♡』
  • ビタークラウン(ななみや りん)『チノちゃんをペロペロします』
  • Public bath(いずみゆひな)『ひみつのトイレ』
  • 純銀星(たかしな浅妃)『ご注文は魔法少女ですか?』
  • ネテクラス(ろりしn)『チノちゃんにお兄ちゃんと呼ばれたい。』
  • てぃこてぃこたっく(徳弥 あおい)『しゃろの今日もがんばれ♡2』
  • Heaven'sGate(安藤智也)『月とうさぎと金髪少女』
  • ELRIZ(山田コナユキ)『ご注文のシャロちゃんです!』
  • いもむや本舗 - Singleton(あずまゆき)『シャロとリゼの秘密のレッスン』
  • しらたまこ(しらたま)『うさぎシンドローム』
  • 虚無の歌(佐藤登志雄)『ごちそうさまでした』
  • PINK CHUCHU(みけおう)『チノちゃんのパンツ』
  • 明日亭(明日茶)『俺の黒ずんだティッピーをもふもふしろよ』
  • ARCHF(利木)『GUD』
  • 最果て空間(緋乃ひの)『ご注文は私たちですか?』
  • かめぽてる(戌月ジロウ)『ご注文ってわたしですか?』

 

 

過去講義一覧

 

 

*1:本の表紙だけでは正確な内容把握は困難なため、実際に購入して一読した本を調査対象とした。

*2:「チノを攻めるにあたって脱いでいるココア」といったものは1カウントとした。シナリオ上1カットの登場、および奥付などに描かれているものはカウントしないものとする。