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うらがみらいぶらり

チラシの裏のアーカイブ

「ゆゆゆアナザー」として『銃皇無尽のファフニール』を観る試み

アニメ イメージ CLIP

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『銃皇無尽のファフニール』とは『精霊使いの剣舞』である。今期「四大」の中でも、もっとも伝統の踏襲に成功している作品だ。

そして、同じディオメディア制作の艦これと比較して、「特殊な女の子がクリーチャーと戦う」という点で似ている。このため、ファフニールをしばしば「艦これ型二番艦」と呼んでいた。しかし、ここ最近の艦これのありさまを眺めていて、むしろ艦これを「ファフニール型二番艦」と呼ぶべきではないか、とも思ったりするが、ファフニール最新話を眺めて「おもんねえ」と感じてしまうたびにその考えを取り下げている次第だ。

総合的に見た時、ファフニールは「四大」の中ではイマイチな作品なのだが、このラノベアニメのなかには『結城友奈は勇者である』の片鱗が隠れている。主人公・物部悠の「記憶を失う」という設定を、最近流行の「美少女残酷物語」の類型に重ね合わせると、それは「ゆゆゆの別の可能性」と見立てることができた。

この見立てにしたがって視聴してみると、ファフニールもなかなかにおもしろい作品として楽しめる。「ゆゆゆアナザーとしてのファフニール」はことさらプッシュすべき見方でもないので、裏紙のメモ程度のものとして、ざっと記していく。

 

 

物部悠について

今期には3人の松岡禎丞がいる。『冴えない彼女の育て方』の安芸倫也、『アブソリュート・デュオ』の九重透流、そしてファフニールの物部悠だ。

「クズで自己中なオタク」という安芸倫也と比べ、物部悠はどちらかと言えばパンチ力に欠けるキャラである。「精霊剣舞のカゼハヤ・カミトとなにが違うの」と聞かれても、「銃を使うゥ…」としか返せない。いわばこの手の物語では鉄板の「クールを装う女性にモテやすい少年」という主人公だ。

そんな物部悠の戦闘能力だが、「女性専用能力を使える男性」という設定が目立つも、実は彼の「D」としてのスペックそのものがイレギュラーだったりする。以下に概要を記す。

  • 上位元素(ダークマター)生成量が異様に少ない。平均的なDの約1000分の1*1であり架空武装*2も「3発撃てる銃」が辛うじて作れる程度。
  • ただし、少ないのは「一度に生成できる量」であり、一定量以下ならば何度でも生成できる。拳銃弾程度ならいくらでも生成できる。
  • 彼は”緑”のユグドラシルと取引をした結果、様々な銃器・兵器の材質や使用法のデータを、脳内に保持している。
  • 彼の銃器生成は、このデータ群を読み込むことで実行される。構造が複雑な銃器だろうと、3話の最後で使ったバベルだろうと正確に生成できる。
  • なお、上記の大量のデータ群によって、取引時に「恐怖という感情」と「記憶の一部(両親に関すること)」を喪失し、”白”のリヴァイアサンにバベルを撃った際には「深月は義理の妹である」という記憶を失っている。

ざっとこれだけのスペックが記せる。上記要素は原作1巻を読めば知ることができるが、アニメだとユグドラシルのくだりと、記憶喪失をにおわせる程度しか実は描かれていない。生成量については描写が皆無に等しい。

で、重要になるのは「切り札を使って記憶を失う」という点である。言わずもがな、ゆゆゆにおける満開と散華、とりわけ東郷美森の散華である。

 

物部悠=東郷美森 説

野獣先輩新説シリーズみたいなアレだが、物部悠と東郷美森(鷲尾須美)には共通項が見出だせる。

  • 主要武器は銃(ならびに巨大砲塔)
  • 「大樹」をモチーフとした存在と接触する
  • 切り札を使用して記憶の一部を欠損する

物語のスタートとしても、「過去の記憶を失った状態で新しいコミュニティにやってきて、新たな戦いに巻き込まれる」という点が、「やってきてからの時間経過」に差はあるものの、フレームとしては似ている。物部悠が結城友奈と出会い勇者部で1年間活動する物語も、東郷美森が記憶を失った直後にミッドガルへやってくる物語も、ありえる話ではある。

しかし、当たり前だが両者は同質の存在ではない。東郷は『鷲尾須美は勇者である』で主人公を務めたとはいえ、基本的には「変身ヒロインチームの一人」である。これ対し、物部悠は「変身ヒロインチームの中に乗り込んだヒーロー」という存在である。

ヒロインとヒーローという差異は、地味ながら大きい。「少女には問題解決能力がない」ということではない。「少女のみのチームで世界を救う」「少女のみのチームに男性が入り込んで世界を救う」では、物語の方向性が異なってくる、ということである。

 

少女の重荷を肩代わりするヒーロー

『銃皇無尽のファフニール』という作品の、少なくとも1巻における物語の概要は、「死と怪物化の脅威と戦う少女の重荷を、主人公が全て肩代わりする」というものと思われる。

仮に、物部悠がいなかった場合のファフニールはどうなるだろうか。ブリュンヒルデ教室の面々ではリヴァイアサンを止められず、深月がイリスを手に掛けるか、イリスが自死するか、イリスがドラゴン化するか、という結末が予想されないだろうか。というより、本編以前の時系列に、「ドラゴン化した篠宮都を殺害する」という物語が実際に存在している。

怪物化した人間を殺める苦渋の決断を迫られる。見覚えはありませんか? そう、『幻影ヲ駆ケル太陽』です。つまりファフニールは、容易に「変身ヒロインの精神リョナ物語」へ転げ落ちる可能性もあったのである。そして、ファフニールがなり得た物語の近似値として、最も新しい事例がゆゆゆである。

ここで僕が考えたことは、「物部悠の有無によって、ファフニールになるか、ゆゆゆになるかが決定するのではないか」ということである。つまり、勇者部に物部悠がいれば、物部悠一人だけが記憶と身体機能を散華して、ファフニールから物部悠を抜けば、ブリュンヒルデ教室は壊滅するか、誰かが結城友奈になったのではないか、ということである。

 

ゆゆゆアナザーというMF的王道

物部悠抜きのファフニールとは、ひたすら少女が死ぬか怪物化するかで、おそらく精神的に消耗しながらも戦い続ける物語になり得る。昨今流行りの、少女がひたすらひどい目に遭う物語である。それが王道かと言われれば、場合によってはトラウマを作り出し、場合によってはリョナオーク御用達となるのだから、少し異なるだろう。

一方で、物部悠を加えたゆゆゆとはどうか。勇者部という美少女だらけの部活に、男一人。僕は真っ先に『GJ部』が思い浮かんだが、似たような作品は無数に連想し得るだろう。そこにバーテックスとの戦いが差し込まれ、勇者部たちが窮地に陥ろうとも、物部悠はこう言うだろう。「後は全部俺に任せておけ」と。その先には、彼だけが散華しまくるも、五体満足な他の勇者部の支えによって快方へ向かうだろう。そしてもとの学園生活に戻る。

つまるところ、ゆゆゆみたいな物語に、男性主人公をひとり添えるだけで、それはMF文庫Jにありがちな物語になるのである。つまるところ、現行ラノベアニメの王道である。

こういった見立て方によって、僕は「ゆゆゆは容易にテンプレラノベに転がり得た」という気付きと、「ゆゆゆアナザーとして見ればMFテンプレも楽しめる」という悟りである。最も好きな作品の「別の可能性」として見ることで、「これはあの作品のifなのかもなぁ」と受け容れることができる。こういう変則的な方法をとってしまうのは心苦しいが、「ゆゆゆじゃないからクソ」というよりは、マシな受容ではないかとも思う。

 

ざっくり話をまとめると

  • 『銃皇無尽のファフニール』から物部悠を消すと、流行の「少女が残酷な目に遭う物語」になる。
  • 『結城友奈は勇者である』に物部悠を加入させると、MF文庫Jで売れる。
  • 少女だけだと満遍なく少女が消耗していくが、一人でも男性ヒーローがいれば、一人で全ての重荷を背負わせることができる。
  • ただし、少女オンリーのチームを過酷な運命に相対させると、結城友奈という女性ヒーローを誕生させる可能性がある。

まぁ「だからなんなんだ」という話ではあるが、「僕はゆゆゆ味にすれば楽しめる」という気付きである。しかしそれでも5話の水着回がこう、もう、ため息の絶えない回で、「直前に禁呪綴らなきゃよかった」と後悔したほどだった。

とはいえ、切り札で記憶が欠けるという設定は個人的に好感触で、それがゆゆゆ直後だったため、ファフニールへの好感度が上がったのは確かである。そして、原作を読むとガバガバなアニメも勝手に補完できて楽しめた体験も、アニメ外情報を積極摂取したゆゆゆのリアタイ放映時の興奮を思い出した。「これがラノベアニメの楽しみ方なんだよなぁ」とまざまざ思い知らされた感じだ。

「好みの作品の要素をもって好感的に受け容れる」という手法は、なるべく多くの作品に対して用いていきたいと思う。案外、今回のような発見・気付きも得られるきっかけにもなるものだ。*3

*1:本人によれば「物質変換した場合で換算して約十キロ」であり、これに対しイリスが「どんな”D”でも最低十トンは生成できる」と証言している。

*2:”D”ガールズが使う杖とか弓とか槍とかのアレ。ちゃんとした名前が出てくるのはアニメ4話である。

*3:しかし「ファフニールはおもしろいか?」という話はまた別の問題である。