読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

うらがみらいぶらり

チラシの裏のアーカイブ

ISUCA ―90年代ラブコメゾンビの襲来―

アニメ 作品紹介 PUBLISH

 f:id:wasasula:20150206234024j:plain

そのアニメは、1月もまもなく終わろうという日にやってきた。

他の作品が激動の3話4話を放映する中、余裕たっぷりの構えで1話放送。その堂々たる姿は、まさに重役出勤。かのアニメの名を『ISUCA』と言う。

KADOKAWA一門最後の刺客として放たれたこのアニメは、とんでもない逸材であった。先に降り立った四大ラノベアニメや、燃え盛る泥船と化したアニメ艦これすら楽園と感じるその威光は、まさに「妖魔」としかいいようのないポテンシャルである。

率直な言い方をするならば、今期最強のクソアニメである。

しかしながら、『ISUCA』は想像を絶するクソさと同時に、憎めない愛嬌もまた多く抱えている。時はゼロ年代を通り越して2015年ながら、このアニメはまるで90年代かのようなオーラを放ち、見る者を牧歌的な心地にし得るものだ。時代に逆らうトラディショナルな雰囲気を、リアルタイムで感じることができるのである。

以下にて、2015年冬季の大トリになるべく生まれてきた怪作『ISUCA』の魅力について記す。

 

 

はじめに:『ISUCA』概要

『ISUCA』は作:高橋脩のマンガが原作のアニメであり、原作は2009年からヤングエースにて連載中である。「碇シンジ育成計画の人の作品」といえば、かなりの人がピンッとくるだろう。

その内容をざっくり説明するならば、「退魔師や妖怪の美少女と妖怪退治をしたり、お家騒動に巻き込まれたり、ラッキースケベしたりする」といえる。高橋脩氏のコメントを借りるなら、「放課後退魔アクション&ラブコメな作品」である。昨今なかなか見かけなくなった直球でトラディショナルなコンセプトの一方で、公式サイトに掲げられた「激突(ラヴ)」という巨大なコピーが、アンバランスな魅力を醸し出している。

このラブコメマンガをアニメ化するにあたり、選りすぐりのスタッフたちが集結している。

まず制作には、『クイーンズブレイド』『世界でいちばん強くなりたい!』などを手がけたアームスが選出され、『RAIL WARS』『みなみけ おかわり』のシリーズ構成を手がけた鈴木雅詞氏がシリーズ構成を手がける。

さらにOPにはアフィリア・サーガ、EDにはTWO-FORMULAが抜擢され、かの『俺の脳内選択肢が、学園ラブコメを全力で邪魔している』を彷彿とさせる布陣を見せつけてくれる。

声優についても、メインヒロイン・島津朔邪に、『お兄ちゃんだけど愛さえあれば関係ないよねっ』『精霊使いの剣舞』などで主演をつとめた木戸衣吹をキャスティングするなど、製作陣の本気を感じることができる。

そして、最速放映は1月23日、すなわち全10話である。あえて少ない話数で挑む心意気は、まさに重役出勤といったところだろう。

あらゆる面において死角を見せない本気の体制を前に、視聴者は放映前から「激突(ラヴ)」を感じたことだろう。

 

ISUCAのここがすごい!① なつかしさ

f:id:wasasula:20150206233341j:plain

本作を目の当たりにした人が高確率で抱く感想、それは「古い」であろう。

一体どこか古いのか。それがもはやわからないレベルだ。「これ、20年前のアニメじゃないの…?」という戸惑いを、ISUCAとの初対面時には強いられることとなる。

まず、「作画が古い」というのは1つの感想として真っ先に上がる。女の子は多少ごまかし得るが、主人公はまるで『天地無用!』から抜け出てきたかのような姿をしている。枚数もかなりの節約に踏み切っており、戦闘シーンの動かなさは序の口、2話では群れネズミの妖魔が現れるが、大量のネズミが北朝鮮のマスゲームのように静止する姿は、「そんなところに注力する気はない」という潔さすら感じさせる。

「音が古い」という感想も挙げられる。劇伴はこんなものかと思える程度だが、画面ワイプ時に使われるSEは、サザエさんかドラえもんから拝借してきたような気の抜けた音だ。言語化が難しいが、「ピコピコピョコン」という音が、妖魔を追う緊迫したシーン間で使われる、と記せばその異様さが伝わるだろうか。1話アイキャッチ時の無駄にシリアス間のあるBGMも、すさまじいギャップを生み出している。

そして言わずもがな、「作風が古い」のである。「学園退魔モノとラブコメ」というジャンルはもちろん、「本当に平凡な主人公がある日突然怪異に巻き込まれる」というド王道のシナリオライン、「妖魔」「雷獣」「猫又」などのそのままネーミングなどなど、全体的な要素が徹底して90年代ラブコメのそれなのである。ここまで徹底的だと、「これが37代続く島津流の伝統か」とすら思わされる。

以上を総合して得られる印象は、「10年前の低予算成人向けアニメ」である。このイメージは、『一騎当千』から『クイーンズブレイド』へと連なり、かつては成人向けアニメを手がけていた、アームスの辣腕といったところであろう。

 

ISUCAのここがすごい!② 牧歌的バトル

f:id:wasasula:20150206233806j:plain

『ISUCA』は退魔アクション活劇である。そのため、見どころのひとつに退魔戦闘シーンが挙げられることは、容易に想像がつくだろう。全体的には和テイストであり、なぜかゴーレムなどの設定もまぎれこんでいるが、総合的にみれば「退魔」というコンセプトで調和がとれているだろう*1

結論から言えば、このアニメの戦闘シーンはとにかく「牧歌的」である。巷には「ターン制バトル」という批評用語があるが、そんなものを通り越して「牧歌的バトル」である。

『ISUCA』の戦闘において、対戦者は正面から対峙するのが礼儀である。そして、互いの行動が終わるまで手出ししてはいけない。これがひとつの前提となる。

1話では雷獣との戦闘がある。基本的にこの戦闘シーンは、雷獣と朔邪のタイマンになるのだが、基本的にどちらかが行動を終えるまでもう一方は静止している。島津流弓霊術の必殺技を一発放つ間、雷獣は狛犬のように鎮座している。また、時折挟まる戦闘中のクソエロイベントの間も、雷獣はきちんと待ってくれる。むしろ「攻撃したのだから今度はそちらの番だ」と言わんばかりに、朔邪の攻撃を待つほどだ。

一方の朔邪も、雷獣の攻撃に対する選択肢は当たるか避けるかであり、「攻撃を封殺」「物陰に隠れながら奇襲」といった近代的戦法は取らない。モンスターの真正面から弓で応戦するという状況は、モンハン経験者であればあまりマネしたくないものだろう。このハイリスクな立ち回りが通用するのも、雷獣との間に成立した「礼儀」によるものであろう*2

「相手の技の後にこちらの技」という暗黙の了解は、ポケモン的であるとも言える。そこには、「複雑な駆け引きやトリックばかりでは視聴者が混乱する」という、製作陣の思いやりがこめられている。『ISUCA』の戦闘シーンは、きっと幼い子どもでも理解できる。牧歌的なバトルシーンは、まさに視聴者に対する「激突(ラヴ)」そのものなのである。

 

ISUCAのここがすごい!③ 露骨なエロ 

f:id:wasasula:20150206233747j:plain

『ISUCA』のもう一つの魅力、それは「ラブコメ」である。なにせ作者がそう言っている。「放課後退魔アクション」とともに飽食気味なジャンルだが、それゆえに一定数の顧客がいる。これは純粋な強みだろう。

そんな『ISUCA』のラブコメ要素であるが、パラメーターを振り間違えたのか、完全なエロと化している。

まず、画面上ではよく服が脱げる。そんなことは珍しくないが、とにかく脱げるのだ。なにせ開幕30秒でいきなり全裸女が現れ、画面を「くろいきり」が覆い隠す。口裂け女なテンプレ展開なので、もちろんありがたみなど皆無である。とはいえ、いきなりモザイク処理が走るとなると、明らかにエロへパラメーターの9割を投じたとしか思えない。

先に述べた雷獣との戦闘時すら脱げる。当たったらタダでは済まないような雷撃が直撃しても、器用に服だけ破ける。それも「スカートの前だけ」「ブレザー正面だけ」など、禁呪詠唱のおっさんすら凌駕する部位破壊テクニックである。さらに、脱げたまま弓を構えたり、「脱げたまま帰宅した」としか思えないシーンが挟まるなど、とにかく徹底してエロの要素を差し込んでくる。

f:id:wasasula:20150206233824j:plain

さらにこのアニメ、木戸衣吹が喘ぐ。「生気を吸うかわりに最高の快楽を与える」という雷獣のドスケベ攻撃に、朔邪はモロに直撃してしまい、喘ぐ。女性声優が喘ぐアニメもめずらしいものではないが、重要なのは木戸衣吹は1997年生まれの17歳だという事実である。リアルJKの喘ぎ声が公共放送に流れるアニメはそうそうない。これは、絶大な価値といえよう*3

その他にも、猫又女との濃厚なディープキス、下着姿の女子生徒が「ネズミに全身をかじられて気持ちよくなる幻覚を見せられる」など、とにかく『ISUCA』にはコテコテだが強烈なエロがバラまかれている。

エロ枠としては今期は『新妹魔王の契約者』がケタ違いの実力*4を見せつけるが、『ISUCA』は低品質寄りの作画によって、10年前の安い成人向けアニメを見ているかのような心地にさせてくれる。トラディショナルなエロは、劇的な「激突(ラヴ)」をあなたにもたらすだろう。

 

まとめ

『ISUCA』について以上のような見どころを記したが、正直これだけの魅力を見出しても、1話と2話はなかなかに視聴が苦しい。しかし、「朔邪の妹が出るとおもしろい」などの声も聞くため、おそらくここからさらにおもしろくなるのだろう。今後の展開に期待が高まるばかりだ。

しかしながら、『ISUCA』の本質とはやはり「90年代ラブコメの亡霊」であり、ラブコメ飽食時代を迎えた現在に蘇るそのさまは、まさにゾンビである。身体が腐り、手足がもげても問題などない。死体が動くことそのものに絶大な価値があるのだ。

同じKADOKAWA一門の徒かつエロ枠として、やはり『新妹魔王の契約者』の存在は脅威である。しかし、『新妹魔王の契約者』が異常性欲と文脈断絶を重力特異点レベルで圧縮した「時間の伸長」だとするならば、伝統性欲と地続き文脈を質素にあつらえた『ISUCA』は「時間旅行」である。各々で楽しむポイントが異なるので、そこには気をつけたい。

とにもかくにも、まずは1話と2話を観てほしい。上記以外にも、様々な魅力が詰まっている。そしてあらゆる意味で、あなたはそこに90年代の復活を目の当たりにするだろう。そのなつかしさを「古臭さ」と感じた時、想像を絶する「虚無」を味わうことを保証する。

さぁ、『ISUCA』でタイムトラベルを始めよう。その先に待ち受けるのは、今にも腐り落ちそうなラブコメの原風景だ。旅を終えて戻った時、あなたはきっと「新しいアニメを見よう!」という、前向きな気持ちを得られる。『ISUCA』は、人々に明日への前進をもたらす日本のふるさととして、あなたの来訪を待ちわびている。

*1:識者によれば、島津という家系はきちんとした伝統があり、「鎌倉より続く」という設定がそれを補強しているらしく、唐突に「エクスカリバー」や「グングニル」などの武器を持ち出されるより圧倒的に説得力がある、とのことである。

*2:2話ではネズミ妖怪が登場し、ネズミが苦手な朔邪の一撃をネズミ攻撃で封殺する描写があるが、「礼儀をわきまえない姑息な妖魔」ということを暗示する良いシーンである。

*3:同種のアニメとして精霊剣舞が存在することは否定しない。

*4:魔王は『ISUCA』以上のエロ作画、エロシチュエーションを備え、画面全体が何度も光に包まれるレベルである。