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うらがみらいぶらり

チラシの裏のアーカイブ

ドンピシャに突き刺さった「第1話」について話そう

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素晴らしい第1話と出会えた時、この青髭の旦那みたいな顔をしているのかもしれない。

アニメの第1話とは、その作品との初対面の場であり、作品に対する第一印象を左右する。放映前からプッシュしているわけでもない限り、第1話に対する印象で視聴継続を決めるかどうか、判断する人も少なくないだろう。

振り返ってみれば、僕が頻繁に話題にする作品は、おおむね第1話で釘付けにされたものが多いのだ。しかも、いい意味で裏切られたケースが多い。「いい意味での裏切り」は、強大な引力になりやすいのだろう。

ということを言いつつ、以下でここ最近気に入った「アニメの第1話」を、普通に紹介していこうと思う。とにかく第1話大好き人間なんです。

 

 

「最初の事件」という導入 『機巧少女は傷つかない』

直近2記事でラノベアニメを散々に言った記憶があるけど、好きなラノベアニメももちろんある。とはいえMF文庫J系列では数が少ないのはたしかで、かつ「第1話がよかった」というと、さらに数はしぼられる。『機巧少女は傷つかない』はそのひとつだ。

僕が一番好きな物語の始まり方に「最初から一事件起こす」というのがある。そのアプローチとして「いきなりバトル」というのがあり、それが『IS』だったわけである。ただ、ISは終盤のバトルシーンを切り出して1話冒頭に持ってきているので、どうしても時間軸の断絶が生まれてしまう。これが結構、物語の流れでは「落差」になりやすい。ISもかっちょいい空中戦闘の後に映ったのは気まずい教室だったし、ちょっと拍子抜けしちゃったところがあった。

『機巧少女は傷つかない』の1話がよかったのは、「その後の本編と時間が地続きになった一事件」を持ってきた点だ。「物語で最初に描かれる事件」であると同時に、汽車が走る20世紀初頭イギリスの世界観と、自動人形という物語の中核要素を、暴走列車のように駆け足ながらも端的に拾う。そして暴走列車という適度に緊張感のある状況も相まって、これらの要素がテキパキと提示されていくのが、実に小気味よかったのだ。OPカットの特別導入ということもあり、「MF文庫原作なのに面白いぞ!?」と当時は驚愕したものである*1

この冒頭だけでなく、ED直前も夜々に窓ガラスを割らせながらマグナスに飛びかかる シーンで幕引きと、ベタながら次回への引きがうまいなぁと感心していた。「始まり方がおもしろいラノベアニメってない?」と聞かれたら、迷わずおすすめできる。

 

高密度のドンパチと情報 『ヨルムンガンド』

作中独自用語ではなく、ミリタリや業界の知識が多量に詰め込まれた、「知識アニメ」とでもいうアニメはたまにある。『ヨルムンガンド』はガンアクションとしても最高だが、武器売買、世界の武器事情など、調べればドツボにはまりそうなテーマが据えられており、毎回頭がティルトローターみたいに回転していた思い出がある。

1話は原作でいうと1話・2話を、それぞれAパート・Bパートに盛り込んだ内容であり、連載2回分の密度といえる。もちろん戦闘シーン密度は濃いし、しかも突入するまでが早い。「雇ったばかりの少年兵を即現場投入」という話の始まり方故、当然ともいえるが。

で、とにかく銃撃戦の嵐なのだが、それと平行して「周辺諸国との空軍力均衡」「戦争へ転げ落ちる」みたいな話もさらっと混ざる。それについていちいちココが解説するということもなく、「ジャベリンを焼夷手榴弾で逸らした!?」っていう解説も入らない。セリフも短くまとめて早口気味なので、ボーっとしていると「つまりどういうこと?」という状態になる。

なので、きっかり理解するには集中して頭を働かせながら見る、というのが最善になる。銃声の雨を浴びながら脳をフル回転させると、体感時間はグングン伸び、それでも衰えない密度に言い知れない満足感を感じる。これが『ヨルムンガンド』の魅力だ。そして1話は入門編としてちょうどよい密度だ。

また、この1話だけで1エピソードが完結しているので、「気軽に30分楽しみたいな」という時にもちょうどいい。ただし、そのまま2話へ転げ落ちてしまえば、武器商人との旅を続行し、12話分の時間が吹き飛ぶことも保証しよう。

 

頭と尾の相似形快楽 『結城友奈は勇者である』

一時期ゆゆゆブログと化した当ブログ故、あらためて話すというのもアレだが、「いやゆゆゆは1話がすげーよかったのよ!」という話である。

言いたいのはひとつ。「冒頭の勇者パンチと終わりの勇者パンチの一致が気持ちいい」だ。冒頭の人形劇で繰り出した勇者パンチは「日常の象徴」、神樹結界へ送り込まれた後に、バーテックスへ叩きこむ勇者パンチは「非日常の象徴」である。この対照的な二つに同じ言葉を与え、頭と尾をつなげた時、見事な相似形を描くのである。

この構造の美しさたるや、本当に最初はびっくりするほど感動した。それこそ冒頭の青髭の旦那みたいな顔になったものだ。

以前に散々話したので、あとはぜひ1話を見てほしい。ちなみに最近の発見は、「パンチ直前・変身直後の友奈は下手、パンチ直後の友奈は上手に立っている」「つまり勇者パンチはバーテックスに対して友奈が上手へ移行する手続きである」である。

 

「普通の日々に至るまで」を描く 『きんいろモザイク』

上記のゆゆゆからさかのぼること1年前、まごうことなき日常が四国ではなく千葉県に花開いていた。ごちうさよりさらに前のユートピア、『きんいろモザイク』だ。ちなみに制作はゆゆゆもきんモザもStudio五組である。

この1話、原作ではたった数コマだけ描かれた「忍とアリスが知り合ったエピソード」をものすごく拡大して描いたものだ。「最初はハローとコニチハーで会話したんだよ」という五割ギャグなのだが、アニメ版1話では「言葉が通じなくとも心は通じ合う」というド感動エピソードにまで昇華している。巧みなシェフの腕として、ただただ感心させられる。

「ふしぎの国」と題されたこの第1話は、単に原作の巧みな調理例としてだけではなく、2話以降に描かれる「シノとアリスたちの日常」の土台にもなる。きらら系列の根幹は「なんでもない日常」だが、中学生の忍がイギリスのアリス邸へホームステイする1話はちょっとした非日常「ふしぎの国」への冒険である。穏やかで短い冒険を経て、忍はアリスという異国の少女と心を通わせるという小さな成長をして、日本へ帰国する。その延長線として、「アリスが日本にやってきた日常」という本編を用意することで、「バックグラウンドを持つ日常」が完成するのである。それは、ただ単に配置された日常よりもずっと頑強なものとなるのである。

という理屈付けもさることながら、この1話は単体のショートアニメとしても秀逸の出来である。単体で出来上がった1話は本当に強い。誰でも手につけやすい上、そのまま以降の話へずぶりずぶりと沈みこみやすいからだ。

 

モチーフで要約 『アイドルマスター シンデレラガールズ』

最後は今季のアニメを取り上げる。ぶっちゃけこれも前に話したのだが、全体について話した記憶があるので、冒頭にのみ焦点をしぼる。

高垣楓センターの「お願い!シンデレラ」の裏で、荷物を運ぶ卯月、花を運ぶ凛、階段を駆け上がる未央、そしてガラスの靴を拾う武内Pが実に象徴的に描かれる冒頭1分。時計クロックとともにライブシーンへ移行するこの場面、個人的には現実の描写ではないのではと考えている。

ガラスの靴入りの荷物を運ぶ卯月は「アイドルを目指す普通の少女」を、花をセッティングする凛は「花屋を手伝うが夢中になれるものがない少女」を、慌てるように階段を駆け上がる未央は「最後のシンデレラガールズとして選ばれた少女」を、それぞれイメージしているのではないだろうか。卯月と凛については1話全体で、未央も1話の終わりにて、それぞれ冒頭のイメージのような描かれ方をされている。いわばこの冒頭は「1話全体の要約」であると同時に、武内Pがガラスの靴を拾うカットからして、シンデレラガールズという物語全体の要約、とも見立てられるだろう。

とにかくすごいのは、こんな要約しまくってモチーフの圧縮ブラックホールになったものを、開幕から遠慮無く叩きつけるところだろう。このブラックホールを、1話を通してちゃんと解きほぐしていくのも1話の魅力だが、ライブシーンもふくめたインパクトは、まさに映像媒体ならではだ。

 

 * * *

 

ざっくりと、最近どっぷりはまった第1話を挙げてみた。

 

この他にも『ラブライブ!』2期は、1期で「挫折」の象徴だった「雨」を穂乃果の一言で消し飛ばした、圧倒的「神格」が素晴らしかったのだが、なにぶん2期ものなので今回は外した。

 

あとは無難どころとして、『ブラック・ブレット』1話は手堅い。戦闘、人物紹介、世界観提示、かわいい延珠など、ラノベアニメとしてはベーシックだが飽きにくい仕上がりだ。原作がテンプレラノベよりは変則的という事情はあるが、正統派バトルものと近年流行りの「女の子がひどい目にあう話」の導入として、きっちりとした出来栄えだ。

 

それとおすすめしたいのは、『四畳半神話大系』の1話だ。これは、1話単体というよりも、1話から最終話まで全体を通して、という意味合いで「しっかり見ておくと得をする」と推奨したいものだ。あまり話しすぎると本当にネタバレになるので、これっきりは1話からぶっ通しで見ることを推奨する。本当にネタバレになるのだ。本当に。

 

とにかく今回は第1話にすさまじく焦点をしぼって話したが、もちろん第1話だけで全てが決まるアニメばかりではない。ガルパンのような、1話から最終話まで右肩上がりという作品もある。あくまで楽しみ方、視聴のきっかけとして、「第1話にピントを合わせる」という方法を提示したい。

*1:ちなみにこの始まり方は原作ほぼそのままである。