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うらがみらいぶらり

チラシの裏のアーカイブ

「好み係数」の導入 ~『アブソリュート・デュオ』に虚無を感じた理由を探れ~

アニメ CLIP

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ゆゆゆ論壇の魔の手から逃れた僕を待っていたのは、虚無だった。

2015年冬アニメの早期スタート組に入ったひとつ、『アブソリュート・デュオ』の1話を視聴した。MF文庫J原作という時点で、このアニメが好みに入るなど経験上あり得なかったのだが、とにかく新鮮な空気を求めて、僕は見え透いた苦行へ飛び込んだのだ。

30分後、僕にもたらされたものは「無」だった。

なにも感動せず、なにも嫌悪しない。好悪の感情などなく、ただただ平坦に30分が流れていった。それは、僕が生まれてからアニメを見てきた中で、おおよそ初めての経験だった。

「まるで、水だ。水のように、なにも引っかからず、体を流れていく」

ある意味では新鮮な体験として、『アブソリュート・デュオ』は辛うじて僕の記憶にとどまった。そして関心はおのずと、なぜ一切の感情が湧かなかったのか、ということになっていった。

『アブソリュート・デュオ』というアニメを点検していくうちに、「結局は好みに引っかかるかどうかなのだ」という、ある種の真理にたどり着いた。「好み係数」とも呼ばれる概念の理解は、「なぜぼくはゆゆゆがあんなに好きだったのか」という根源的な謎の解にもつながったのである。

 

 

まず、『アブソリュート・デュオ』とはどんな作品か。公式HPよりあらすじを引用したい。

《焔牙(ブレイズ)》――それは超化された精神力によって、

自らの魂を具現化させて創り出す武器。

千人に一人と言われる《焔牙》の適性を持った者に

戦闘技術を教える学校・昊稜学園では、生徒達が

《絆双刃(デュオ)》と呼ばれるパートナー制度で絆を結び、ともに魂を高め合う。

今、《焔牙》が武器の形ではなく、

防具――《楯(シールド)》の形をとってしまった《異能(イレギュラー)》の少年

九重 透流と、銀色の髪を持つ少女・ユリエ=シグトゥーナの

物語の幕が上がる。

パートナーとの絆で未来を掴みとる

学園バトルアクション!!

魂を灼き尽くし、

俺はキミの《楯》になる――

いかがであろうか。これほどまでに定形の、幕の内弁当のようなあらすじがあるだろうか。なにせ「焔の牙」と書いて「ブレイズ」である。これはとんでもないことである。

ご覧のとおり、『アブソリュート・デュオ』とは端的に言って「学園バトルモノ(美少女込)」であり、MF文庫Jの十八番ともいえるジャンルである。

その上で、この作品をある程度の細かな要素に分解する。ただし、以下の要素は「僕が把握した限り」であることを留意してほしい。

  • 学園バトル
  • 謎の美少女
  • 美少女に好かれる
  • ラッキースケベ
  • 武器を召喚する
  • 中二病全開の当て字
  • 主人公が異端
  • 競争社会の学園
  • 異性の二人組
  • 同性の二人組
  • タイトルが作中キーワード

以上、11の要素に分解できる。意外に多いものである。

さて、これらの要素であるが、僕に限って言えば好みの要素がほとんどない。

「武器を召喚する」「同姓の二人組」くらいが、僕の好きな要素にあたる。「異性の二人組」はまぁまぁいけるし、「タイトルが作中キーワード」は場合によってはかなり好きになる。それ以外については、ぶっちゃけ『ゼロの使い魔』や『IS』の時代から、心を動かされたことが皆無だ。

つまり、11の要素のうち、2つだけが安定した好みポイントとなる。20%にも満たないのである。

では、『アブソリュート・デュオ』という作品は嫌いなのか。それは違う。僕はこの作品を「水のように引っかかりがない」と形容した。「好きでも嫌いでもない」ということだ。それは、「嫌い」とはどう違うのか。

 

ここで用いたいのが、「好み係数」という概念だ。

この概念自体は、先日大学サークル時代の先輩の家でアンパンマン鑑賞会をしていた時に耳にしたものだ。端的に言えば、「ある要素がどの程度好きか」ということをそれっぽく言い換えたことばだ。特にむつかしいものではない。「○○が何倍も楽しくなる」という言い方は、誰もが耳にしたことがあるだろう。

この「好み係数」を、『アブソリュート・デュオ』にあてはめた場合どうなるか。

  • 学園バトル 係数:0.5
  • 謎の美少女 係数:1
  • 美少女に好かれる 係数:1
  • ラッキースケベ 係数:1
  • 武器を召喚する 係数:1.3
  • 中二病全開の当て字 係数:0.8
  • 主人公が異端 係数:1.1
  • 競争社会の学園 係数:0.8
  • 異性の二人組 係数:1
  • 同性の二人組 係数:2.0
  • タイトルが作中キーワード 係数:1.2

このような数値が出される。そして、0を「自分の中で無いものとする」と判断し、それぞれの係数をかけあわせていくと・・・

 

 『アブソリュート・デュオ』の好み係数=1.09824

 

小数点第2位で四捨五入すれば、1.1だ。つまり、単純に見れば「1.1倍のおもしろさ」ということになる。

だが、このようにはじき出された係数は、なにに乗算されるのだろうか。おそらく「作品に対する期待値」であろう。

そして、好きな人には申し訳なかったのだが、『アブソリュート・デュオ』に対しての僕の期待値は、おそらく0以上1.0以下だった。つまるところ、おもしろさが1.0からほぼほぼ変わらないのだ。おそらく、これが「水のように引っかかりがない」と感じた最大の理由なのだろう。

 

そう考えていくと、ゆゆゆは徹底的に、僕の中で高い係数をはじき出す要素ばかり集まっていた。ゆゆゆの要素はおおざっぱに以下のようになる。

  • 女の子が世界を救う 係数:2.0
  • 女子中学生 係数:3.0
  • 女の子だけが集まる部室 係数:1.1
  • 異空間で敵と戦う 係数:1.2
  • 「勇者」というモチーフ 係数:1.3
  • 女の子が主人公 係数:3.0
  • 主人公が超前向き 係数:3.0
  • 身体障害 係数:1.1
  • ビビッドパンチ 係数:3.0

僕がざっと見えただけでも9つの要素があり、どれも僕の中で高係数をはじき出すものばかりだ。そして、全てを単純にかけ合わせると・・・

 

 「結城友奈は勇者である」の好み係数」=305.7912

 

とんでもない数値である。2位以下四捨五入で305.8になる。

ここからさらに、初期の期待値がだいたい1.1~1.3程度だったので、最大397.54の好み係数が提示される。「だいたい400倍楽しかった」ということである。そりゃこのブログで2万字近くも語り散らさせるわけである。

 

上記の係数には、「こんなもんかな」といま適当に決めていっただけなので、正確性に欠ける。また、全話視聴したゆゆゆに対し、『アブソリュート・デュオ』は1話しか見ていない。『アブソリュート・デュオ』の見どころは、個人的には「同性の二人組」が(主に百合方面で)化けそうな気もするので、もう少し数値が高くなる可能性もある。

しかし、どんなに厳密に数値基準を定義しても、スタート時点で可能性にあふれた作品が約1.0に対し、終わった作品が約400である。このヒエラルキーだけは、それこそ百合とビビッドパンチが連発されなければくつがえりそうはない。こればかりは、なるべく諦めたくないが、どうしようもなさそうだ。

そして、好み係数から明らかになったことがひとつある。

どんなに面白い視聴スタイルを提示できても、まず好み係数がその人にとって低ければ、好みの作品になるわけがないのだ。

ゆゆゆはエモーションの物語であり、ロジックをビビッドパンチで粉砕する作品である。そして世の中には、ロジックがなってなければ、好み係数がマイナスにふりきれる人だっている。そればかりは、さすがにどうしようもないのだ。

 

面白くする観方、納得させる観方は、おそらく無数に存在する。だが、それらで「嫌いだ」というマイナスの係数をプラスにすることは難しい。人によっては、プラスになるかもしれない。もしあるとすれば、その視聴スタイルは、とても革新的なものだろうが、なかなかそれは少ない。

どんな人にも好き嫌いはある。「正しいアニメの観方」などとは言うが、まずは「どんな人に好かれるか」ということを念頭に置かなければいけない。そんな自戒を胸に刻みながら、『アブソリュート・デュオ』という水と向きあおうと思う。

 

 

■余談

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主人公がパンチ使いだったことは意外だった。しかも「一回使うと負担が大きい」らしい。もしかするとビビッドパンチか勇者パンチかもしれない。だとすると一気に係数で3.0倍になるのだが。

書いていて思ったが、係数は乗算じゃなく加算にしたほうがいいかも。あまりにも数値が開きすぎている。実際このくらいの開きは体感であったけど、さすがに不公平感が否めない。

あと、「僕の中で勘定しないと判断した要素」って、0にすべきか1にすべきか迷うところがある。ただ、0を「なにも残らない本物の虚無」として導入すれば、魔法戦争のような作品にも対応できそうな気がする。でも「魔法戦争は人間の物語」という話を聞かされ、「魔法戦争はおもしろい」という人を幾人か見かけてしまうと、0導入事案はどうするか迷う。うーむ。

それと、今回は単純な個別要素を見たけど、実際は相乗効果、相反効果もあるだろうという。いずれ体系化できればいいけど、ほっとくと忘れそうではある。

あと個人的な感想としては、なんかキャラの名前がおぼえられなかった。ヒロインの銀髪、ユリエ=シグトゥーナっていうのね。あまりなにも感じないのが悲しい。