うらがみらいぶらり

チラシの裏のアーカイブ

ビビッドパンチのその先へ ~ビビオペ2.0としての「結城友奈は勇者である」~

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「結城友奈は勇者である」がとにかく熱い。

とりわけ9話放映直後は、「ポストまどマギ」だのなんだの、様々な感想や評論が飛び交った。その評価はともかくとして、かなりの人数に評論・批評レイヤーで語らせてしまった時点で、ゆゆゆがバズられるコンテンツに成長したことは、揺るぎない事実だろう。その意味では、ゆゆゆはすでに「ポストまどマギ」の位置についた、と言えるかもしれない。

このような状況だからこそ、僕はあらためて、声を大にして言いたい。

「結城友奈は勇者である」はビビオペ2.0である。

そして、10話という佳境に突入した今、「ビビオペ2.0」という言葉は、「ビビオペの追随」ではなく「ビビオペの超克」、あるいは「ビビオペの再審」であることが明らかになった。

本論は、5話から10話までのゆゆゆを振り返り、ゆゆゆがどのような問いを提示し、どのように進もうとしているのか――換言するなら「どのようにビビッドパンチの先を描くのか」を考えていく。

 

#参考までに、以前に記したゆゆゆ記事を併載する。

 

 

折り返しのビビッドパンチ起動

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ゆゆゆという物語は、「勇者パンチ」と名をあらためたビビッドパンチによって幕を開ける。この開幕ビビッドパンチが、「ビビッドパンチはお伽話」「ビビッドパンチでは全て解決し得ないだろう」という意思表示であり、ゆゆゆが「万能のパンチ」に頼らない物語であることを主張している、と「問い直されるビビッドパンチ」において記した。

だが、当時の予想とは逆に、結城友奈は5話においてビビッドパンチを発動させる。それも満開によって強化された、「満開ビビッドパンチ」とも言える一撃によって、合体バーテックスという最大の脅威をねじ伏せたのである。

「なんだよ純ビビオペなのかよ」と、その時は思っていたが、このビビッドパンチはビビオペ2.0の文脈からは決して逸れていなかった。「ビビッドパンチは万能ではない」というテーマは、6話にて顕現する。

 

「日常を享受する側」の崩壊

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満開ビビッドパンチによって、勇者部5人はめでたく全バーテックスを倒して「お役目」を終える。よかったね! ハッピーエンドだね! ジュースで乾杯だ! そう意気込んだ矢先の「身体機能喪失」である。

5話までのゆゆゆは、日常なおはなしと非日常なバトルが半々の割合で混在する構造だった。この構造を「ビビオペにも幻影太陽にも転べるようにする保険」と以前は述べたが、その実は混在ではなく、双方の往来を主軸に置いていたのである。

前評判的にも、1話冒頭的にも、ゆゆゆは「なかよし女の子のキャッキャウフフだ」という見方は強かった。幸福の科学学園じみた設定はあるが、おおむねきららにもいそうな雰囲気であり、事実勇者部には日常系の登場人物として暮らせる資格があった。だが、ちょっとだけと寄り道した「戦闘美少女チームの物語」から5話で戻ってくると、なんとまぁ声は出ないわ味がしないわで、日常系の進行に必須の能力を失っていたのである。これには一定数の視聴者は面食らうが、ヘタすると登場人物たちも面食らうかもしれない。「最初に聞いた話とちげえ」と。

そして6話と7話は、「自身が壊れた状態でどう日常と接するか」がひとつの焦点となる。自分たちが守ったおかげで、周りの世界に変わりはない。だがそれを享受する自分自身が壊れている。「異能バトルは日常の中で」が同期にいるが、ゆゆゆは「異能バトルのその後、日常の中で」とも言える展開へとシフトしていく。比較的自由に日常と非日常を行き来したビビオペとの最大の相違点がここである。「日常とは本来尊いものである」というメッセージの提示が、正直なオタクであるほど痛く突き刺さるのである。

 

「神の祝福」が意味するもの

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どうにかして日常系を演じようとした勇者部だが、7話の終わりで「討ち漏らしの1体」を倒せというメールが、新たな精霊を付与したスマホとともに送られてくる。再び戦闘系の物語へ引き戻されるのである。

そうして現れた双子座バーテックスの片割れを殺すわけだが、戦闘後に友奈と東郷だけいつもの屋上ではないところに戻される。そこにいたのは全身包帯だらけの少女。名は乃木園子。そして彼女が東郷を「わっしー」と呼ぶ。ここにきて、前日譚「鷲尾須美は勇者である」との明確なリンクがついに張られるのである。その上で、満開後の後遺症に「散華」という設定名が与えられ、「失った身体機能は戻らない」と園子が告げる。これはいわば「お前たちは二度と日常系には帰れない」という宣告である。

8話のサブタイトル「神の祝福」は、園子のありさまと見比べるとすさまじい皮肉だが、これは青バラの花言葉である。しかし、青バラはかつて実現不能なものであり、それゆえ花言葉は「不可能・あり得ない」だった。この複数の花言葉は「戦闘美少女」というモチーフと照らし合わせると、とてもよく噛み合う。

あどけない少女が巨大な敵に立ち向かう。それははっきり言って不可能なことである。よって、立ち向かう少女には超常的な力が与えられる。その力は「物語」という名の神から与えられる祝福、と言い換えてもよい。

この「物語という神の祝福」を端的に描いた作品がビビオペである。ビビッドシステムという、あかねとその友だちのみ使いこなせる力は、「女の子の友情」をエンジンとしてアローンを撃破する。最後はあかねのれいの友情によって、宇宙をも破壊しようとしたカラスをビビッドパンチで粉砕し、れいの世界も元通りになる。あかねたちビビッド戦士はまさに「神の子」であり、いかなる強敵も、どのような不条理でも打倒することができるのである。

しかし、ゆゆゆは8話において、これを真っ向から否定する。

「ビビッドパンチには代償が伴う」

「支払われた代償は二度と回復しない」

そしてこれら「ビビオペの否定」は、代償の体現者である園子の口から語られる。そして同時に彼女は「勇者は絶対に死なない」「いまは神さまとして崇められている」とも語る。これも、上記とは異なる戦闘美少女への皮肉であろう。

まどマギの最終回の後、我々消費者はどうしたか。あるいはフィギュアを買って奉ったか。イラストを描きまくったか。あるいは描かれたエロ同人でシコったか。それともTwitterのアイコンをまどかやほむらにしたか――これらの消費体系に共通するのは、「動かないイメージの消費」である。

戦闘美少女とは戦闘あって行動できるものであり、戦いの物語が終われば、そもそも行動する理由がない。物言わぬイコンとして、その場に「在れ」ばいいのだ。むしろヘタに動いて勝手な物語を作られては、崇めることは困難である。

ベッドの上の園子は身動きひとつとれない。声を発することができる植物状態といっていいだろう。そして動かぬイコンそのものとして、園子は大赦の大人たちから「神」として崇拝されている。「僕らのために戦ってくれてありがとう」という感謝のもと、乃木園子という元・戦闘美少女は「崇める」という形で消費されている。その姿は、ともすれば友奈たち勇者部の行き着く結末でもあるのだ。

この有り様、劇中では友奈の言葉からたびたび発せられる「押し花」に通ずるものがないだろうか。園子と「神の祝福」の関連性は、それだけでひとつのオタク評論新書を作れるほどだろう。

 

我々はビビオペか否か ~風と友奈の問答~

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8話で明かされた「身体機能喪失は回復しない」という事実は、9話にて風にも伝えられる。よりにもよって妹がスケブ少女になったことをめちゃめちゃ気に病んでいる人に対して、悪気がないとはいえむごい仕打ちである*1

そして追い打ちをかけるように、妹が歌い手コンテストの1次審査に合格したことを知ってしまう。まさに「起こるべくして起きた展開」である。精神をズタズタにされた風はついにブチギレて「大赦を潰す!」と叫ぶ。そこに夏凜、遅れて友奈が立ちはだかる、というのが9話の大筋である。

9話において重要なのは、おそらく風と友奈の問答であろう。「こんな代償を強いた大赦を許さない」と怒る風に対し、友奈は「この代償は平和と引き換えだから仕方ない」と反論する。この舌戦は、いわば「自分たちの作品はビビオペかどうか」というテーマのディスカッションである。

 

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  風「ビビオペやるって聞かされてたのに全然ちがう!許さん!」

 友奈「でもビビオペを繰り返したらダメでしょ!?代償は必要でしょ!?」

 

日常とシリアスを反復横跳びするこれまでのゆゆゆに対し、「結局どっちなんだ」という視聴者の疑問を、他ならぬ登場人物たちも抱いているのである。そして「我々はいったいどちらだ」という問答を劇中で実行する。ビビオペ2.0とは、リアルタイムで更新されていく事象なのである。

そしてこの回においては、「この物語はビビオペではない」と主張する友奈が上手に立っていることから、ゆゆゆはビビオペを否定する物語である、ということが推測される。この立ち位置が揺らぐのかどうかが、今後の焦点と言えよう。

 

崇める世界を打ち砕け

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9話の最後にて不在だった東郷さん。彼女の動向は、最新話である10話にて描かれる。

10話では、8話でさらっと提示された「鷲尾須美=東郷美森説」を完全に肯定し、彼女がいわば「2周目の勇者」であることが明かされる。そして、神樹の結界の外、バーテックスの正体など、この物語の世界観が雪崩のように公開されていく。「バーテックスは使徒もどき」と冗談で言っていたが、この使徒は再生する上、すでに外の世界はフォースインパクト後の世界だったのだ。

自分たちは地獄の中に築かれた箱庭の住人であり、同時に守護者として酷使される運命にある。そう思い知らされた東郷は、「この世界そのものをぶち壊す」という選択を下す。風先輩はまだかわいい方だったのだ。やはり黒髪ロングに変身ヒロインをさせてはいかんのである。

この回を再び戦闘美少女の文脈に沿って考えるなら、「崇める世界を打ち砕け」というメッセージが出てくるだろう。

 

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10話では再び園子が出てくるが、彼女が寝る場所は、神社内部の祭壇のような病室であり、園子は今の自分の状況を「なにも怖くない植物のよう」だと語る。「押し花」との連関性も強めるこの発言と描写は、「動きを封じられ崇められるヒロイン」というイメージをさらに強める。

そして、勇者システムとは植物同然のヒロインを何人も生産することで、神樹が創る箱庭世界を保護するものである。考えようによっては、神樹世界は戦闘美少女の消費サイクルに、そこに生きる人々は戦闘美少女をこよなく愛する、僕のようなオタクたちに見立てることができるだろう。

その世界に対し、東郷は風穴を開け始める。自分たちをモノのように崇める世界を破壊することは、ともすれば自殺と同義だが、押し花にされるのは我慢ならないのである。似たようなモチーフは数多くあれど、こんなに露骨な世界観のもとで、「崇める世界への叛逆」を選択できたことは、注目に値するだろう。

そして風穴から、大量のバーテックスが流入する*2。ここからどうなるかは、11話以降のお楽しみである。とはいえ、円環の理によって生まれた「魔法少女らしい世界」を書き換えるという「崇める世界への叛逆」を実行した暁美ほむらという先例が存在するので、この展開自体に新規性はない。しかし、ほむらが「世界の塗替え」を行ったことに対し、東郷は「世界の破壊」を選択している。微妙にアプローチが異なるので、結末がどのように変わるか見届けたいところである。

 

 総括

ゆゆゆはとにかく6話からが本番だった。僕は正直なオタクなので、6話で勇者部に次々と身体異常が起きた時は、思わず腰が抜けてしまった。しかし、まさにあれがビビオペとの最大の差異となり、「ビビオペのその先(あるいは描けたであろうもの)」を見出すには十分すぎる要素となった。

ゆゆゆはすでに、2回ビビッドパンチを起動している。しかし、それで万事解決はしていない。体に障害を抱え、日常系へ戻れなくなり、挙句外の世界はとっくに滅んでいたし、倒した敵は復活しようとしている。なんともハードモードなビビオペである。

警戒するべき点は、これに近いヤバい状況ですら、最終話で「みんな元通りになったよ!」としてしまうのが、本来のビビッドパンチの効力ということである。よくよく考えると当然だが、最終話のビビッドパンチが一番ヤバい。神樹の箱庭から新世界創成までいってしまうのか、僕たちは最後まで油断ができないであろう。

ただし、「神の祝福」を起点とした、「戦闘美少女のお約束などあり得ない」というメッセージ性は、すでにゆゆゆの存在意義となりつつある。これもビビッドパンチによる勇者システム改良でひっくり返りそうだが、「こんな都合いいわけねーだろ」と主張してくる展開の数々は、このジャンルに一石を投じるには十分だろう。

そして頻繁に語られるまどマギとの関係性だが、あちらは外部から持ち込まれたシステムに食いつぶされる物語に対し、こちらは属するコミュニティのシステムに酷使された挙句に崇拝のイコンにさせれる物語と、ひどい目に合わせる存在が異なる。なにより魔女はちっとも崇められなかったが、お役目をはたした勇者は変なおっさんがひれ伏している。それぞれから読み取り、連想できる事柄は異なるであろう。

ビビオペの先の世界。ゆゆゆはすでに、その領域に踏み込んでいる。最終話に向けて着目すべきは、言うまでもないが「ビビオペの問い直し」の結論であろう。

かつて「Web2.0」という言葉が生まれたが、現在のウェブはそんな言葉なしに元気よく稼働している。ビビオペ2.0としての「結城友奈は勇者である」が、どのような「新しい基礎」を生み出してくれるのか。しっかりと見届けたい。

*1:それにしても風先輩、調子に乗ると勢いよく上から不幸でぶん殴られるし、不憫である。

*2:よくよく見ればこれ、OPで勇者部が蹴散らしている雑魚バーテックスである。