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うらがみらいぶらり

チラシの裏のアーカイブ

ラブライブ!2期5話「新しいわたし」における神格移譲

アニメ 物語構造 PUBLISH

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外部研修であたふたしているうちにもうラブライブ!10話じゃん!HAHA!

というわけで1ヶ月以上経っている5話について今さら書く次第である。

しかし、5話は(個人的に)かなり特殊な動き方をしているので、時間差かつ個別で記事を設けるべきであると思う。なおかつ、この回で歌われた凛ちゃん初センター曲『Love Wing Bell』は今月の11日にリリースである。タイミングとしてはバッチリであろう。

・4話までのラブライブ!神格論についてはこちら

・そもそも「神格」ってなによ?という方はこちらへ。

 ※ 今回から、「神格」はカッコ無しで使用する。

 

 

はじめに:5話ってなにが特殊なの?

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ラブライブ!2期が「穂乃果が神格を振るいまくるおはなし」であるのに対して、5話「新しいわたし」は穂乃果が神格を行使することがない。端的に言えば、主人公が神格を使わない話なのである。

それじゃあ物語が進まないじゃない!ということになるのだが、代わりに神格行使の役割を担うキャラクターが設定される。言うまでもなく、そのキャラクターこそ星空凛である。

だが、考えてみてほしい。これまで親が設定したPCを使っていた子どもに、いきなり「このWinのセットアップやってね」と頼んだらどうなるだろう。間違いなく狼狽するだろう。「管理者権限ってなに!?」となるだろう。

5話で描かれるのは、いきなり神格を与えられた凛の困惑と、それを乗り越えるまでの過程である。もっとも、克服に必要となるのは知識ではない。センターに立って物語を進める、という覚悟が必要になる。

 

1:今回の高坂穂乃果

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さて、ラブライブ!における「神(予定)」こと、主人公の高坂穂乃果はこの回では不在となる。よりにもよってこのタイミングで修学旅行、それもよりにもよって沖縄である。どうすんのよ季節。「暑すぎなくていい」で済むのか。

ところで、神格を持ったまま音ノ木坂を離れるわけにもいかないため、穂乃果は神格を音ノ木坂に置いて沖縄に旅立つ必要がある。そう、沖縄にいるこの回の穂乃果に、「台風それろっ!」で台風を消滅させる力は存在しないのである。

そのため、穂乃果が物語を大きく動かす場面はあまり存在しない。音ノ木坂という中心舞台に対して影響を与える手段は、「ケータイ越しに話す」しかないからである。だがそれでも、重要な局面で物語をひと押ししている。こちらは後述したい。

 

2:管理者権限の重み

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黄金聖衣」というものがある。黄金聖闘士が身にまとう、最上位に位置する聖衣である。非常に強力だが、セブンセンシズに目覚めたり、相応の技量を持っていたり、黄金聖衣の意思に認められたりしないと力を発揮できない。そして極めて乱暴な言い方をすると、神格とは黄金聖衣に他ならないのである。

つまり、物語を自在に動かす力はあるが、その負担は尋常ではない、ということである。あの穂乃果ですら、1話では大量の書類(=神格の象徴)を前にして狼狽していた。ましてや今までメイン回を与えられなかった凛がその責務を背負ったらどうなるか。こわれるのである。

 穂乃果が置いていった神格を誰が運用するのかという問題に、のぞえり執行部は「凛に運用してもらおう」という決定を下すわけだが、物語の運用など毛ほども知らない凛はめちゃくちゃ焦るのである。焦りからお嬢様口調になってしまうし、意見を求められてもなにもいえない。そして、「中心にいるようなタイプじゃない」と自己否定するのである。

おはなし的には、「男の子っぽいと言われた過去」と結びつけて自己否定の理由付けがなされるが、構造的には移譲された神格に対しての戸惑いからくるものと判断できる。なにせ、運用に失敗すれば物語そのものが空中分解する危険もある。そのプレッシャーは計り知れないだろう。

 

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真姫と花陽に対しての自己否定、ウェディング衣装を前にしての逃走は、全てこのプレッシャーからきている。しかし内心では、ウェディング衣装、ひいては女の子っぽい服に、誰よりも憧れを抱いているのが星空凛というキャラクターである。

重要なのは、一連の行動が「凛は神格運用に不適格である」という物語側の判定ではなく、「不適格だと思う」という凛個人の思いこみによって引き起こされていることである。この誤謬は、1期と同様に、真っ暗な自室にいることが原因である。

 

3:花陽への限定移譲

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一悶着の後、結局ウェディング衣装は花陽が着ることになる。しかし、穂乃果が神格を与えたのはあくまで凛であり、当然ながら絵里からの電話に首をかしげる。そして、凛が着ないことをよしとしない花陽と穂乃果は、緊急会議を開くことになる。

ラブライブ!ではおなじみの電話(Skype?)相談シーンだが、最初の着眼点は穂乃果が下手、花陽が上手にいることである。この会議は穂乃果がアイデアを授けるのではなく、花陽が抱えるアイデアに穂乃果がゴーサインを出すものであることを、構図の段階で示しているのである。

このシーンでなにが起きるのか。凛が持て余す神格を、元の持ち主である穂乃果が、限定的に花陽へ移譲させているのである。

 

その結果が、ライブ当日の衣装すりかえである。

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凛が神格を使用していれば、「凛の着替えボックスの中」という状況設定を書き換えることはなかったはずである。それを花陽は神格を用いて書き換え、凛がウェディングドレスを着るようにセッティングしたのである。

そして、花陽は真姫といっしょに、凛の背中を押す。言わずもがな、1期4話の逆転構造である。

重要なポイントは、花陽に与えられた神格は、「凛が神格を受けいれるようにする」という目的のためだけに運用されているのである。凛がしっかりと神格を使い、今回の物語を動かせるように後押しするために、花陽はタキシードを着て凛をエスコートしたのである。

 

4:「新しいわたし」へ

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かくして凛はウェディングドレスを着る。かつて背中を押した花陽と、一緒に花陽の背中を押した真姫の後押しで、神格を身にまとう決意を固めたのである。

花道を歩む彼女はもう「中心にいるようなタイプじゃない」と言わない。穂乃果から託された神格を背負い、皆の中心に立って物語を動かすキャラクターになっているのである。このあたりの「ウェディングと花道」などの構図はとんでもなく露骨なので、あらためて語る必要はないだろう。

 そして、彼女が神格を発揮してライブを成功させた余波で、沖縄の雨が止む。このことから、沖縄の台風は凛の心中を暗示していたのだと推測できる。

 

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さらに、今まで暗いことが多かった凛の部屋が明るくなる。明るくなった部屋で、ワンピースに袖を通す。これも、「凛の部屋は電気がついていない」という状況設定を、凛自身の神格で書き換えたといえるだろう。そして、明るくなった部屋で彼女はこう思うことができるだろう。「似合わないなんて思い込みだったんだ」と。

 

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そしてそして、最後にはまさかの練習着チェンジ。凛というキャラクター自身の変化という、「新しいわたし」というタイトルにふさわしいシメである。「暗い階段を登り、光の方へと踏み出すことができる」という構図についても、あえてこの場で言うことはないだろう。強いていうなら、「”凛の練習着”という根幹設定に近いものが変更された」という点は、神格の機能として考察に値するだろう。

 

まとめ

今回の神格移譲の流れをまとめると、

 ①穂乃果「沖縄行くから神格は置いてくね」

 ②絵里「じゃあこの神格どうしよう」 希「凛ちゃんに持たせてみたら?」

 ③凛「こんなもの使えないにゃ〜」

 ④花陽「というわけで凛ちゃんが困ってます」

 ⑤穂乃果「じゃあちょっとだけ神格使ってなんとかしてね」

 ⑥花陽「凛ちゃんなら大丈夫だよ!」 凛「わかったにゃ!」

 ⑦凛「意外といけるにゃ!」

という感じになる。つまるところ、花陽アシストがなかったら結構危なかったのである。

この回における重要なポイントは、「神格は移動可能なものである」ということである。主人公が絶対神として行使し続けることも可能だが、誰かに託して代行させることもできるのである。これを便宜的に「神格の代行」と名付ける。

神格の代行によってどうなるか。考えられるメリットとして、「中央集権的な物語になりにくい」ということが挙げられるだろう。ワンマンな物語は事故が発生した時の被害が甚大である。それは1期における穂乃果の脱退宣言後のμ'sを見てもわかるだろう。

 

しかしながらさらに重要なのは、ラブライブ!は誰もがセンターに立てるということにつきるだろう。

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つまり、凛ちゃんよかったね! ということである。いやはや本当によかった。