うらがみらいぶらり

チラシの裏のアーカイブ

ちょっとおもしろい絵本を見ましたぞ(夢の中で)

巷では「大人向け絵本」というものが流行っている。絵本だが、内容はビターだったりシビアだったり、とにかくあまり子供向けではない絵本だ。

僕も先ほど、そんな大人向け絵本の中でも、おもしろい絵本を読んだ。しかし現物をお見せすることはできない。昼寝をしていた時に、夢の中で読んだものだからだ。

 

絵本の内容は、時間とお金に関するものだった。だけどたまに「言葉の長さ」を「新聞を居間で広げて読むか、電車で閉じて読むか」にたとえて説明したり、話題は二転三転していた。

本は物語仕立てになっていた。ひとりのサラリーマンが主役になっていた。家や電車で資格の本を読み、そのせいか結構自分勝手にふるまい、妻や娘が迷惑する、ということが描かれていた。嫌なタイプのお父さんである。食器洗いに関連して「あることに時間をかけると、他のことにしわ寄せがくる」とか書いてあったような気がする。

 

ここまでならよくある絵本だけど、ここからがすごい。

主人公は夕方ぐらいに家に戻り、マルボロとミスドを買ってきて(このあたりのチョイスがリアルだ)一服していると、突然家が揺れ出す。外を見れば大嵐。「このままでは家の崩壊は免れないだろう」とページに記され、そこが最後のページ。「えっ?これで終わり?」と、驚いたしモヤモヤした。「火災のリスクと保険」というコラムもなぜか書いてあって、「こういう事態に備えなさい」という教訓なのかと思った。

しかし、少しすると後ろのページがいきなり現れた。最後のページの奥にある、表紙の裏がペリペリとめくれ、新たなページが出てきた。そこには「全てを守る方法はある」的なことが書いてあり、僕は思わずそれをめくった。

なんとサラリーマンの主人公が、嵐の中を巨大な丸太を担いで進んでいたのである。

「20日後に家が壊れるだろう。それまでに、我が家を補強し、守れ」

ということが書いてあり、丸太などで改装しようという魂胆なのだろう(無理があるが、絵本ならまぁいけるだろう)。

しかも単に描かれているのではなく、そこから先は「時間の経過」という概念が追加され、ページをめくらないと主人公が歩みを進めないというものだった。そこでめくろうとするが、ページ数が多い上に、なぜかゆっくりとしかページを開けない。しかも結構力が必要だった。まるで「嵐の中を丸太を担いで進む」ことの困難さを再現するように、ページを重くしているようだった。

しばらくすると、下の方に「このような選択肢もあるが…」と、小さな袋とじのようなページがいきなり現れた。そこを1ページめくると、「ダメだ!しかし、最後の手段だろう…」というコメントとともに、「母の介護費を切り崩す」という言葉が、シール封印に記されていた。

これは、サラリーマンの主人公には老いた母がいて、介護か入院かは知らないが、それに金がかかっているということだろう。つまり、老いた母を見捨てることでこの場をしのぐかどうか、という選択肢を突きつけるのである。

僕は怖いので、袋とじの中身を、封を切らないように見たが、その場はしのげたが母は死に、それがめぐりめぐって自分のもとに返ってきて、最終的にバッドエンドになるという内容だった。僕は腕が疲れようとも、主人公に丸太を運んでもらうことにした。 

 

そして、何度かページをめぐると家の改築に成功し、なんと巨大な安土城みたいなものができあがっていた。それが新居らしい。ここにきて「絵本だなぁ」と驚かされたが、その次のページもすごい。

なんと、爬虫類が進化した知的種族の偉い人たちが、大挙してその「新居」にやってくる。無駄に「この種族は脚の筋肉が〜」という詳細スペックまで描かれ、これはSFかなにかと誤解した。その後、彼らは国際的親善のどうたらなんたらで、要はその「新居」を高く評価し、なんやかんやで金も名誉も手に入るという展開になり、母も家に招き幸せに暮す、というハッピーエンドで終わった。ご都合主義だが、なぜか「あぁ、よかった」と心底思えたのは、そこまで至るために重いページを自らめくったからだろう。

 

こうして絵本は本当に終わるが、ページを見返してみると、なんと新しいページが増えている。そこには、主人公はかつてバリバリの運動系で、とび職の手伝いをしたことがあり、その経験を活かして改築しようといういきさつが記されていた。

さらに、家が完成するまで、主人公が家造りと会社を往復する日々が簡単につづられ、急に目つきがよくなった主人公が会社でも業績をのばし始める様子が描かれていた。

要はリザルト画面のアレンジだろう。「改築工事しながら平時は会社勤めってどんなスーパーマンだオラ」と言いたくなったが、そこは絵本だし、重いページをめくった読み手も報われる内容の方がいいに決まってる。

 

すごく面白い絵本だっただけに、夢オチだったことがすごく悔やまれる。生まれてはじめて夢オチに舌打ちをしたほどだ。

当然、ページが増えるならまだしも、「ページをめくるのに時間がかかる(重さ的な意味で)」「途中でページが出現する」といったことは、紙媒体の絵本では不可能だろう。おそらく電子書籍なら可能だし、丸太を運ぶくだりはボタン連打のゲーム仕様にすることで再現できるはずだ。ページも増やせる。しかし、夢の中では紙媒体の絵本だった。だから印象が強く残ったのかもしれない。

あと、なんとなく全体の雰囲気というか、一部の言葉の選び方が容赦ない印象を受けた。すごく海外のものっぽいとも思ったし、海外の絵本を翻訳したものかもしれない。「Dumb Ways to Die*1」が近いかも。

願わくばいつか、この本を作りたいものである。夢のままにしておくのは惜しい。

*1:オーストラリアの鉄道会社が作った安全啓発動画。コミカルでファンシーなキャラクターが焼死感電死轢死の大盤振る舞いの動画である。
Dumb Ways to Die - YouTube